今季の成果と課題がよく表れたゲーム 優勝争いできる勝ち点を積むために【轡田哲朗レッズレビュー/J38節名古屋戦】
(Report by 轡田哲朗)
柴戸と金子が組んだダブルボランチが見せた成長
浦和レッズは4日のリーグ最終節の名古屋グランパス戦を0-0で引き分けた。リーグ戦における無失点の最多記録を更新したことは1つの成果ではあるし、攻撃力や得点力に不十分な点があることも結果に出た。そして、その過程に発生した現象などを含めて今季の縮図、リカルド・ロドリゲス監督が就任して1年間のリーグ戦を戦ってきた中での現在地をかなり正しく示したゲームだと思っている。
リカさんが「負傷者も戻ってきて、全員でトレーニングができた」と話した一方で「天皇杯が最大目標になってきている」という趣旨のことを試合前に話したように、キャスパー・ユンカーや明本考浩、柴戸海がピッチに戻ってきた一方で、かなりプレータイムが多くなっていた平野佑一や山中亮輔、伊藤敦樹、江坂任といった選手たちはスタメンから外れた。今季限りでチームを離れる阿部勇樹、槙野智章、宇賀神友弥もベンチに入って、後半の残り10分は彼ら3人がそろってピッチに立っていた。もちろん、ホームゲームであるとか勝利したゲームという付加価値がつけば良かったが、彼らが浦和のユニフォームを着てピッチに立つ姿を見られたのは喜ばしいことだった。
多少の驚きだったのは、金子大毅と柴戸海がスタメンのダブルボランチで並んだこと。それというのも、リカさんが率いてのチームビルディングでスタート地点になった沖縄キャンプを取材した際に、彼らの組み合わせでボランチを組む姿は、シーズンでほぼ見ることがないだろうという感覚があったからだ。当時、2人が組んだセットは全くボールが前に進まずにボールロストを繰り返す一方、彼らが強力なボール奪取力を発揮して奪い返すような状況で、リカさんの志向とはかなり違う方向のセットになっている印象だった。実際に、彼らが組んだ試合がほとんどないまま約1シーズンが経ったが、リーグ最終戦で彼らが並んでスタメン出場してそれなり以上にボールが前に進んでいくようになったのは素晴らしい成長だと言えるし、それをピッチで示す回数の多かった柴戸だけではなく、金子も選手としての価値を高めていると証明した試合になった。
前半に見せたロジカルな前進と、最後に割れない課題
前半は、リカさんが植え付けてきたポジショナルプレーの概念、基本形とも言えるような相手の隙間にポジションを取ってズレを生んでいくことの典型的な時間になった。浦和は酒井宏樹を内側に入れる3バック変化をして、4-4-2の名古屋に対して3-1-5-1という感じのシステムに変化して、ミルフィーユ状に挟まっていくような構成になった。相手の2トップを柴戸の位置で引っ張り、前の空いたアレクサンダー・ショルツがドリブルで侵入する。明本を高い位置に置いて、汰木がインサイドから背後へのプレッシャーをかけているので、ショルツの前に出ていこうとしたマテウスを稲垣が「行くな」と制止する状態だった。
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