浦レポ by 浦和フットボール通信

選手とチームの成長、突きつけられた課題、シーズン全体を振り返る【轡田哲朗2021シーズンレビュー】

(Report by 轡田哲朗)

キャンプでは相手ボール時の整理にもかなり力を入れていた

浦和レッズの2021年シーズンは、J1リーグを勝ち点63の6位、ルヴァン杯をベスト4敗退、天皇杯優勝で幕を閉じた。19年末に3年計画を打ち出したクラブは、今季に向けて大槻毅監督からリカルド・ロドリゲス監督にスイッチした。そして今季は、2年目の目標としてAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権の獲得をメインにして戦った。その意味で言うと、リーグ戦でのACL出場権獲得は達成できなかったが、天皇杯のタイトルを獲得することで目標を達成することができた。だから、目標に対する結果としては高い点数が付くだろう。

沖縄県でのトレーニングキャンプを取材することができたので、リカさんが大きく分けてどのような方針でチームを作っていくのか、そのスタートアップを見ることができたのは幸運に恵まれた。前年度の課題にマイボールの安定性、あるいは低い位置からの前進が挙げられたチームだったので、その部分にフォーカスしたレポートも多くなっただろう。ただ、この部分に関してはいきなりJ1の中位以上になるような質が出せた感はなく、特に個々の技術力の部分がどれだけ伸びるのかを見ていくしかない状況だった。

一方で、小さいスケールのグリッドから、徐々に大きくしていく形で4バックの整理、強化をしていたことも見逃せない要素の1つだった。この4バックを中盤の選手に組ませれば、そのまま4-4-2の2列目の守備に応用できることになる。いわゆるイタリア的な守備用語だと「ディアゴナーレ」や「スカラトゥーラ」と言われるような、スペースを使わせないカバーリングと、後ろから押し上げていく連動性の整理をしていた。プレス戦術の導入として意識づけや周囲の動きに合わせて自分の判断を変えるトレーニングを繰り返していたのもこの時期で、意外と相手ボール時のことを先に準備していたと言えるかもしれない。

それは少し長い目で見た時に、シーズン序盤のうちに勝ち点の帳尻を合わせることにつながった。そして、シーズンが経過する中では攻撃の部分やマイボールのことにフォーカスする時間的な余裕を作る助けになっただろうし、大槻さんの1年間で完璧とは言えないまでも、4-4-2で1シーズン戦ったことは導入を楽にしたかもしれない。

そのキャンプを取材していく中で、当初はそれなりに戦えそうな感覚は得たものの、橋岡大樹やレオナルドの移籍、さらには規律違反に伴う柏木陽介と杉本健勇の謹慎に加え、最終日の北海道コンサドーレ札幌戦に内容的にも完敗した姿を見た時には、「最初はかなり厳しいかな」という所感があった。シーズンを見た上での逆算で言えば、シーズンの札幌戦は2試合ともリカさんが5バックに近い組織を導入したわけだから、元々かなり難しい相手だったとは言える。ただ、チームにも危機感と「このままではマズイ」という警鐘が鳴らされたことは、良いタイミングだったかもしれない。

組織を機能させるのは人、小泉の存在感と柴戸の成長

(残り 3570文字/全文: 4825文字)

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