ベトナムフットボールダイジェスト+

ベトナムで奮闘する日本人サッカー選手、井手口正昭さんにインタビュー ここで活躍してベトナムに日本人選手がもっと来られるような流れを作りたい。

ベトナム移籍のきっかけはクラブ間提携

Q.プロ入り後は、香港リーグへの期限付き移籍を経て、現在のベトナムリーグ移籍に至りましたが、ベトナムに来るまでの経緯を教えてください。

井手口「現在所属しているホアン・アイン・ザライ(HAGL)と横浜FC が業務提携することになって、ちょうど横浜 FC との契約が満了を迎えるときだったので、クラブから練習参加してみないかというお話を頂きました。それで、トライアウトという形で練習参加して、契約までこぎつけることが出来ました。」

Q.これまでに日本、香港、ベトナムの 3 か国でプレーした経験がある井手口選手ですが、それぞれのリーグの環境にはどんな印象をお持ちですか?

井手口「やっぱり日本は食事や医療面などもそうだし、サッカーする上で環境的にすごく恵まれていると感じます。香港なんかは面積も小さいし、専用の練習場を持っているクラブも殆どありません。ベトナムは…HAGL に関して言うと、かなり環境はいいと思います。選手寮があって、ジムやプールも完備。グラウンドは 5 面もあるし、初めて来たときはビックリしました。ホームタウンのプレイクは、ベトナムの中でも涼しい街ですしね。」

Q.ベトナム移籍初年度の昨シーズンは、開幕から 20 試合以上に連続スタメン出場する大車輪の働きでした。海外でプレーする以上、外国人助っ人という立場になるわけですが、海外で成功する秘訣は何でしょうか?

井手口「サッカーはチームスポーツなので、少しでも早く環境に順応することが大切です。チームメイトと積極的にコミュニケーションをとったり…あとは自分の中にストレスを溜めすぎないようにすることですね。来た当初は、どうやったら早く解け込めるかなと思って、ムードメーカーになっている人を探して、そいつと仲良くなるようにしました。」

Q.現在所属するHAGL というクラブについて、教えてもらえますか?

井手口「ホアン・アイン・ザライ(不動産経営や建設などを手掛ける)というベトナムでは知らない人はいない程の大企業が保有しているサッカークラブで、会長のドアン・グエン・ドゥック氏も大富豪として有名です。スタジアムはサッカー専用で、お客さんとの距離も近いし、素晴らしい環境でサッカーをさせてもらっています。」

Q.最近の HAGL は、リーグ全体の観客動員数を底上げするほどの人気ぶりと言われていますが、その人気の秘密は?

井手口「下部組織出身の若い選手たちが頑張っていて、アンダー世代のベトナム代表にも大勢選ばれていますし、ベトナム国内でアイドル的な人気者になっているからじゃないでしょうか。」

Q.特に優秀な若手が多いクラブという印象ですが、昨年は、現在のチームメイトでもある“ベトナムのメッシ”ことグエン・コン・フオン選手(元水戸ホーリーホック)や“ベトナムのピルロ”ことグエン・トゥアン・アイン選手(元横浜 FC)が J2 リーグに期限付き移籍しました。今後、彼らに続くような選手たちが出てくるでしょうか?

井手口「それは間違いなく出てくると思います。HAGL の選手たちは、若くて、まだまだ伸び代があるので。それに、他のクラブにも上手い若手はいます。選手自身のこれからのモチベーション次第で大きく化ける可能性があります。」

Q.ベトナムサッカーの今後の可能性については?

井手口「大きな可能性を秘めています。最近はサッカーの分野でもベトナムと日本が提携するケースが増えていますが、そこからどんどん良いものを吸収していき、ベトナムらしいサッカーとの化学反応を起こしていけば、間違いなく成長するでしょう。」

Q.ベトナムらしいサッカーとは?

井手口「HAGL では、小柄で敏捷性に優れているというベトナム人の特徴を活かしやすいパス主体のポゼッションサッカーをやっていて、今はそれで結果もついてきています。こういうサッカーをするクラブがどんどん増えてくるといいなと思っています。」

Q.最後に、ご自身の今後の目標についてお聞かせください。

井手口「まずはチームの勝利に貢献することを第一に考えて、一日一日を大事に過ごしていくつもりです。頑張ってサッカーをプレーしている姿を通して、観てくれる子供たちや応援してくれる日本の方々に少しでもパワーを与えられたらいいなと。そして、もっと活躍して、ベトナムに日本人選手がもっと来られるような流れを作っていきたいです。」


プロフィール
井手口 正明(いでぐち・まさあき)1988年、福岡県生まれのプロサッカー選手。身長173cm、体重70kg。ポジションはミッドフィルダー。東福岡高校を卒業後、大阪の阪南大学に進学。2010 年には、主将として関西学生サッカーリーグ優勝を飾り、MVP、ベストキャプテン、優秀選手に選出され、2011 年にJ2 横浜FC に加入。2014 年から2 シーズンは、横浜FC 香港(現在の夢想駿其足球會)に期限付き移籍。その後、横浜FC に復帰したが、2015 年末に契約満了で退団。2016 年からは、ベトナム1 部ホアン・アイン・ザライに所属。3 人兄弟の長男で、末の弟は日本代表の井手口陽介(ガンバ大阪所属)

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