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ハノイFC女子トップチーム 八木秀一監督に独占インタビュー!

現役時代はブラジルとイタリアでプレー。八木監督が目指す監督像とは

Q : これまでの八木監督の経歴を拝見したところ、非常にユニークですね。ブラジルとイタリアでプロ選手として活躍した後、帰国して指導者に転身。その後は、育成年代や女子サッカーで幅広く指導されています。それぞれの国のサッカーの違いや指導するときに心がけていることなどがあれば教えてください。

八木:僕の中で根付いているのは、やはりブラジルスタイル。パッションだったり、自由な発想だったり、相手と一対一の局面は絶対に勝負っていう。逆にイタリアでは、一対一の状況なら出来るだけ早く、二対一を作れという考え方。日本で指導者になってからは、スクールでスペイン遠征にも参加していましたから、バルセロナのスタイルにも影響を受けています。これまで触れてきた海外サッカーの教えを大切にしながら、色々いいとこ取りしてミックスした指導を行っています。でも、モウリーニョ監督の戦術的ピリオダイゼーション理論が基盤にありますね。

Q : 男女間で指導するときの違いではどうでしょうか?

八木:一番気をつけているのは、ちゃんと全員の名前を覚えきるまでは、特定の誰かの名前を呼ばないということ。あまり呼ぶと、贔屓していると思われてしまいます。特に、女子だとグループができやすい傾向にあるので、誰かに注意しすぎると、やはり贔屓だと言われますから、出来るだけバランスよく、同じように接するよ
う心がけています。

Q : 女子サッカーでは、なでしこジャパンのワールドカップ優勝などもあって、日本がアジアや世界でもトップクラスという印象をもっていますが、ベトナムや他の東南アジアのレベルはどうでしょうか?

八木:ベトナム行きが決まってから、代表の試合を何度か見ただけなので、東南アジアのレベルは、まだ実力の程は分らないというのが正直なところです。でも、ベトナムの選手たちは、しっかり教わってこなかった分、伸び代があるし、能力的にもいいものを持っていると思います。なでしこについては、2011 年大会で優勝しましたが、その後、成長しているとは全く思っていなくて、次の 2015 年大会でも最後の勝負強さで、なんとか決勝まで進んだけど、内容的にはかなり押されていた印象。このままじゃ、いずれ勝てなくなると感じました。僕がベトナム行きを決意した理由の一つとしては、「なでしこは今のままじゃ先がないよ」と、そう言える地位作りをするためでもあるんです。ハノイで結果を残し、ベトナム代表のコーチングスタッフに呼ばれるようになって、ベトナムがなでしこを打ち破れば、日本もやっと気づくでしょう。今はアジアレベルで勝てているので、批判の声が忘れ去られてしまっています。

Q : 今後指揮を執るハノイ FC 女子では、どんなサッカーを目指していきたいですか?

八木:とにかくボールをしっかり保持して、試合の主導権を握るサッカー。観ていても、プレーしていても、やはり楽しくなければ女子サッカーの価値というものが上がっていかないので。彼女たちは、もともと技術があるし、それをうまく試合で使えるようにして、その上でそれぞれが一瞬のひらめきを発揮できるよう楽しいサッカーをしたいです。

Q : 2018 シーズン後半からの指揮となりますが、ずばり今季の目標は?

八木:チームはリーグ戦前期で優勝していますから、10 月から始まるリーグ戦後期でも引き続き優勝すること。そして 11 月末にはハノイ市でベトナム国体も開かれるので、リーグと国体の 2 冠が目標です。

●プロフィール
八木 秀一 (やぎ ひでかず)1971年生まれ。ブラジルとイタリアで、11 年間にわたりプレーした元プロサッカー選手。1998年に現役引退。帰国後、2000年に千葉県でサッカースクールを開校し、育成年代の指導に尽力。2012年に、なでしこ1 部INAC 神戸の下部組織監督に就任。2015年には、琉球デイゴス監督に就任して、沖縄勢初の皇后杯出場を果たしたほか、最終的にはチームを九州女子サッカーリーグ1部昇格に導いた。その後に指導した、新潟の開志学園JSC(ジャパンサッカーカレッジ)では、チームを選手権北信越大会優勝、選手権全国大会ベスト16 に導いている。

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