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ベトナム女子サッカー引退後の第2の人生~私たちの生き方 第1回 銀行員に転職した元ベトナム代表ドー・ティ・イエン

「母は私に言いました。もう辞めて帰ってきなさい。娘が強い日差しの下で練習している。両親は観客席にいても、その暑さに耐えられないぐらいなのに。娘が家を離れて僅か2週間、誰だか分からないぐらい真っ黒になって帰ってきた。これが私が14歳のときに、母が話した感想です。私ほど泣き虫の選手が他にいたでしょうか?疲れては泣いて、痛くては泣いて、監督に叱られては泣いて、惨めに感じては泣いて…。何でもないことに、たくさんの涙を流しました。今では、たとえ同じようなことがあっても、もう涙は流しません。」

「この12年間、サッカーのことを考えない日はありませんでした。一生懸命にサッカーを練習して、学業も必死でやりました。最後までサッカーをやり遂げるつもりでしたが、今では別の道を歩むことになりました。引退後に安定した仕事を見つけるのは、女性がサッカー選手として生きていくのと同様に難しいことです。ですから、どうかみんな、私になぜ他の仕事を選んだのかと訊かないでください。」

「私自身、過去には、結婚式場、学校、サッカースクールなどで働いたことがあります。全てはお金を稼ぐためじゃなく、経験を積んで、他の世界を知るためです。まだまだ知るべきこと、学ぶべきことがたくさんあります。働いてみて、初めて自分の知識のなさを痛感するのです。サッカー選手のときは、慣れ親しんだ環境の中で、決められたことだけをこなす毎日。サッカー以外のことを考えない選手だっているでしょう。もし、ある日、何も持たない状態で社会に放り出されたらどうするのか、自分で仕事を探せるのか、自分自身を養っていけるのか、そんな風に考えられる人はごく僅かです。」

「どうして私がこんなことを書いているのかというと、それはこれが、私が経験してきたことの中で、かつての仲間たちに伝えられる唯一のことだと思うから。ただ練習に明け暮れるだけじゃなく、何か自分の好きな趣味を見つけましょう。近い将来のために、時間を費やして、自分に投資しましょう。人生に余分なものなんてありません。努力を怠らず、一生懸命に夢を育みましょう。どんな仕事を選んだとしても、あなたが選んだ道には、それぞれの価値があります。」

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