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レ・コン・ビン物語 “ベトナムの英雄”と呼ばれた男 第九回 思い出が詰まった自転車、手放さなかった理由とは?

レ・コン・ビンが自身の半生をつづった自伝『Phut 89(89分)』。ここには“ベトナムの英雄”と呼ばれた男の幼少期から現在までが記されている。国内最貧困地域の一つゲアン省で真っ黒になってボールを追いかけた少年時代、プロサッカー選手となり、人気歌手Thuy Tienと家庭を築くまで。自伝の中では、幼少期のことだけでなく、八百長や暴力などVリーグを取り巻く様々な問題についても赤裸々に語っている。出版社が発売を記念して、一部の項を公開。その内容を連載で紹介していく。

思い出が詰まった自転車を手放さなかった、小さいけれど大きな決断

 高校に入学すると、僕はすぐに新しいマドンナに出会った。彼女は違うクラスの女の子で、僕のクラスの上の階で勉強していた。僕は普通クラス、彼女は選抜クラスだった。入学後、最初の国旗掲揚式(※ベトナムの学校では毎週月曜日に行う)で近くに座ったのが僕たちの出会いだ。

二人はいつも一緒に過ごし、実際のカップルになった。毎朝、自転車に乗って彼女の家まで行き、一緒に学校まで通った。当時二人でどんな話をしていたのか、今でははっきりと思い出せないが、純粋な愛の記憶だけが残っている。彼女の家に招かれて部屋にも入った。家族は全員留守だったが、僕は彼女の手を握ることすら出来なかった。

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