ベトナムフットボールダイジェスト+

“ベトナムの英雄”レ・コン・ビンがゴルフ選手になるまでを語る 経営者としての将来の夢は「Vリーグでプロクラブを持つこと」

元ベトナム代表キャプテンのレ・コン・ビンは最近、地元メディアの取材に応じて将来の目標などについて明かした。この中でかつての“英雄”はVリーグでプロチームを持ちたいとの野望を語っている。

電撃的な現役引退から4年、自伝出版から2年が過ぎた現在、レ・コン・ビンはベトナムサッカーの表舞台からすっかり姿を消している。時折SNSでアップされる写真には、背番号付きのユニフォームもなく、足元には汚れたボールもない。貧困地域で育った青年が今夢中になっているのは富裕層のスポーツであるゴルフだ。

ゴルフ歴3年というレ・コン・ビンは先日、全国のゴルファーが参加するベトナム・アマチュアゴルフ選手権に初出場。この大会で、新人ゴルファーのレ・コン・ビンは、一部のゴルフベトナム代表選手を上回る成績を残した。地元メディアは“ゴルフ選手レ・コン・ビン”についても興味深いインタビューを行っている。

サッカー界の英雄からゴルフ選手に

記者:私を含め、多くの人が見慣れない姿だと感じていると思います。今回初出場したベトナムアマチュアゴルフ選手権で、ここまでの好成績が残せる自信はあったのですか?

レ・コン・ビン(以下CV):大会が行われたホイアン市に向かう当初に考えていた目標は予選カットラインをクリアすることでした。最終成績で出場120人中14位という成績を残せたことに満足しています。次の大会では、もっと良い成績を残せると思います。ショットには自信があるんです。

photo:ZING

記者:サッカー選手レ・コン・ビンがゴルフを始めたきっかけは何ですか?

CV:現役引退後の2016年末にゴルフを始めました。それからゴルフが好きになりました。妻のトゥイ・ティエン(人気歌手)が、引退後の僕が家で寂しくしているんじゃないかと心配してゴルフに連れて行ってくれたのが始まりです。1年後、シングルのハンディキャップを取得してゴルフが非常に難しいスポーツだと分かりました。

CV:自分にとってはサッカーよりも難しいです。サッカーなら、ある試合で調子がいい時はそのまま次の試合でも好調をキープできます。しかし、ゴルフは毎日が異なります。それも魅力の一つです。今日は良かった、でも明日はダメ、また明後日になると良くなるといった具合に。

CV:ゴルフに出会ってから、私の性格や考え方も大きく変わりました。サッカー選手を引退後、アマチュアの大会に出場することもなく、家族と過ごしたり、ゴルフしたり、自分のサッカーアカデミーで教えたりすることに時間を費やしてきました。

記者:サッカーをするときとゴルフをするときはどんな違いを感じますか?

CV:サッカーでは血が騒いで熱くなります。一方、ゴルフでは常に冷静沈着でいられます。激高や怒りは精神的不安定をもたらし、ゲームにも影響を及ぼすので、自制しなければなりません。サッカーは個人の判断に委ねられる局面もありますが、あくまでもチーム競技。一方のゴルフは自分自身との闘いです。

記者:サッカー界のスターからゴルフ選手に。貧しい少年からサッカーアカデミーの経営者に。ご自身のキャリアを振り返って後悔していることはありますか?

CV:後悔など微塵もありません。生まれてから成長して大人になるまで、ずっと両親のことを誇りに思っています。クインルー郡(北中部ゲアン省)で育ったことも誇りです。とても貧しい地域ですが、その土壌が強い心を育んでくれました。人間は厳しい環境で強く逞しく育ち、人生の見方も変わります。幼い時期の私が過ごした環境は過酷でした。幸いにも私にはサッカーがありました。サッカーは私に全てのものを与えてくれたのです。ですから、何も後悔はありませんし、自分は幸運だったと思っています。

記者:多くの人々がサッカーの世界で活躍するレ・コン・ビンの姿を見たいと思っているはずですが?

CV:今はホーチミン市とブンタウ市(東南部バリア・ブンタウ省)の自分のサッカーアカデミーを発展させることに注力しています。しかし、いつかはVリーグで自分のクラブを所有してみたいと思っています。これは自分が現役時代から思い描いていた古くからの夢です。

CV:現役を退いてから、今後自分が歩むべき道を考えました。まずは自分のアカデミー、そして家族とゴルフにも時間を使いたい。今の生活に満足していますが、将来は自分のプロチームを持ちたいという野心もあります。

記者:かつての他の仲間たちは指導者の道を進んでいるのに対し、レ・コン・ビンの夢は彼らのそれとは少し異なるようですね。

photo:laodong

CV:現役時代から言っていたことですが、プロチームの監督や指導者にはならないと決めていました。監督や指導者の生活は、選手とほとんど変わりません。ずっと家族と離れて仕事をする生活。選手の方がまだ気楽です。試合に負けて辞任するのは監督で、選手が職を失うことはありませんから。選手に嫌われて、選手がプレーしなければ、先に監督のクビが飛びます。監督はプレッシャーのかかる仕事で、鋼の精神の持ち主でなければ務まりません。家族にも忍耐力が求められます。私は鋼の精神を持たず、一般的な人間の精神しか持ち合わせていません。

記者:プロサッカークラブのオーナーになるには相応の資金力が必要です。レ・コン・ビンのビジネスは成功していると言えますか?

CV:サッカー選手がビジネスを始めるのはとても難しいです。人間は何か一つの仕事のスペシャリストであることが多いからです。私の場合はそれがサッカーで、サッカーをするために生まれてきた人種だったので、ビジネスは完全に門外漢です。経営者として生まれてきた人たちとは違うので、成功するのは難しいと言わざるを得ません。

CV:しかし、現在の収入がサッカー選手時代を上回っているかと問われれば、現在の収入の方が高いと答えることが出来ます。今のベトナム人選手たちは、昔と比べてレベルも上がっており、選手としてより長くピッチで活躍できるようになっています。家族もサッカー選手を生活が可能な職業の一つとして認めるようになっており、子供がサッカーを続けることを許す家庭が増えつつあります。これはベトナムサッカー界にとって、よいことだと思います。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ