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ベトナムの血を引くフランス代表選手~キャバイェのルーツをたどる旅~

EURO 2016フランス大会は、クリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルの初優勝で幕を閉じた。優勝が期待された地元フランスは、惜しくも準優勝という結果だった。大会の取材のためフランスを訪れた私は、あるフランス代表選手の実家を訪ねた。もしかしたら、大会そのものよりも楽しみにしていたかもしれない。

2015年にフランスの名門パリ・サンジェルマン(PSG)から英プレミアリーグのクリスタル・パレスに移籍したヨアン・キャバイェ(30歳)は、世界的にも名の知られた素晴らしいミッドフィルダーだが、父方の祖母がベトナム人であることから、ベトナムでは特に親しみを持って応援されている。私は世界の大舞台で活躍を続けるヨアンの幼少期とルーツをたどる旅に出た。

まずは、フランスの高速鉄道「TGV」で首都パリから北部のリールに向かった。そこからさらにバスに乗り継ぎ、ヨアンの両親が暮らすベルギーとの国境に程近いロンクという街を目指した。リールの中心部からバスで40分程の距離にあるもの静かな街だ。ヨアンは6歳から13歳まで、この地で過ごした。

サン・ロック地区の小さな路地にあるごく普通のたたずまいの家。ここでヨアンは幼少期を過ごしたのだ。事前に連絡はしてあったが、外国メディアの取材を快く受けてくれるだろうか・・・。緊張の面持ちでベルを鳴らした私を父親のディディエさんと母親のルイザさんは暖かく迎え入れてくれた。

「はるばるベトナムからようこそ!」ディディエさんは私を見るなり、そう言って笑顔で語りかけてくれた。これは後で知ったことだが、フランスだけでなく、外国のメディアもよく取材に訪れるそうだ。しかし、ほとんど取材に応じることはないという。つまり私は特別扱いということだ。


ディディエさんは現在、この家で妻とヨアンの娘と3人で暮らしている。以前は、ノール県トゥールコワンに住んでいたが、ヨアンが6歳になったころ、この新しい家に引っ越してきたのだという。私が訪問したのは、EURO2016の準決勝フランスとアイスランドの試合が行われる日だった。ディディエさんは、「この後、ジョフレイ(ヨアンの弟で仏4部ESワスケアル所属のサッカー選手)と一緒にフランス代表の試合を観るため、パリに行くので、長い時間は話せないんだ。」と残念そうに語った。

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