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性急な改革で低迷するサイゴンFC、Jリーグ化の野望はとん挫か?

Jリーグ化を謳って、よりプロフェッショナルで、アジアの舞台で戦えるクラブになることを目指したサイゴンFCの挑戦は、早くもとん挫する危機に直面している。旧正月明けに新指揮官に就任した霜田正浩監督(前レノファ山口監督)は、リーグ3連敗の責任を問われる形で早々に解任。実際にチームを指導した期間は約1か月という短さだった。後任となったフン・タイン・フオン監督も不振のチームを救うことは出来ておらず、連敗記録は5まで伸びており、第8節を終えた現時点でサイゴンFCは14チーム中最下位に沈んでいる。既にシーズン前期でトップ6に入るのは難しい状況となっており、シーズン後期は残留争いの下位8チームのグループになると予想されている。

シーズン序盤を通して観た印象では、クラブは低迷期に入りつつあると言わざるを得ない。昨季クラブ史上最高の3位という好成績を残した後、これに貢献した選手の殆どを放出してしまった結果がこれだ。今オフに、元日本代表MF松井大輔をはじめ、Jリーグで実績のある選手たちを連れてきたほか、霜田正浩氏という優秀な指導者を迎えて、意気揚々と新シーズンに臨んだが、あまりにも性急すぎたJリーグ化の代償を支払うことになった。霜田監督の輝かしい指導者キャリアにおいても、サイゴンは汚点を残す結果になってしまった。

理想と現実

霜田氏は当初、シニアダイレクターとして招聘され、新型コロナ対策の隔離を経た後、1月上旬から仕事を開始してチームをじっくり観察し、旧正月明けの2月24日から新監督に就任した。これは、ブー・ティエン・タイン前監督がPVFアカデミーのダイレクターに内部人事異動となったためで、シーズン開幕時点ではタイン監督のもと開幕3試合を2勝1敗という、まずまずのスタートを切っていた。この時点では、昨季の戦い方と同じく堅守速攻のスタイルで、少ないチャンスをものにして辛くも2勝を挙げた。

旧正月明け、サイゴンFCは予てから計画していた指揮官交代に踏み切った。リーグが中断している年末年始に当たり、チームに変化をもたらす時期としては悪くない。さらにはコロナの影響でリーグ再開時期も延期となったため、図らずも新生サイゴンFCとしての準備期間が出来た。指揮官交代の発表があったのは、霜田氏が直接指導を始めてしばらく後のこと。これはチームが霜田監督のトレーニングに慣れるための時間を設けるためでもあった。それでもなお、勝利の女神はサイゴンに微笑まなかった。初陣となったサイゴンダービー、もし松井大輔のPKが決まって先制していたら?ラストプレーのファウルがHCMCのPK判定とならなかったら?リー・グエンがPKを外していたら?IFの話はいくらでもできるが、大事なダービーで敗れ、その後も連敗を続けたという結果がすべてだ。

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