松沢呉一のビバノン・ライフ

在特会はもうおしまい -ヘイトスピーチ規制の今後 (松沢呉一) [シリーズ ヘイトスピーチ規制法の是非 4]-3,641文字-

在特会は終了する!!

 

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先週土曜日にネイキッドロフトで行われた「桜井誠(通名)在特会退会記念 送別会」にご来場の方々はありがとうございました。

あの日の結論を言うと、「在特会はもうおしまい」ということです。またざっくりとしたまとめだな。しかし、実際、そうなる以外にないのです。

桜井誠の今後の動きをまったく知らされていない在特会のメンバーは、「いるだけ邪魔」「信用できない」「能力がない」として見捨てられたと思うべし。あの界隈はもともと結束が強いわけではなくて、派閥同士で互いの悪口を言い合っている人たちであり、今も何が起きているのかまったくわからず、右往左往しているアホも多数いるでしょう。

そんな低レベルの集団をまとめてきたのが桜井誠ですが、その遁走によって、求心力をなくした在特会とその界隈は離脱と対立と分裂を繰り返すしかない。ネイキッドロフトの第二部ではその具体的な予定がいくつか出てきましたが、その通りに動くはずなので注目していてください。その過程で、 在特会内部のさまざまな内部事情、桜井誠個人の情報も漏れ出てくるはず。こちらにも注目。

あの日はそれぞれに、在特会崩壊の事情と、そこに向けてのさまざまな前兆を語ったわけですけど、私はあの場でも語った「ヘイトスピーチ規制法と今後の展開」についての話を続けることにしましょう。

なぜ自民党はヘイトスピーチに触れていないのか

 

vivanon_sentence総選挙に向けて、マニフェストでヘイトスピーチ規制法に触れている党がいくつかありますね。

たとえば共産党

日本共産党は、国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止の理念を明確にした特別法の制定をめざします。

日本共産党は、言論・出版の自由や結社の自由、表現の自由など憲法で保障されている基本的人権を全面的に擁護するとともに、それと矛盾・抵触しないような形の法整備のために積極的に対応します。国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての特別法の制定をめざします。

この理念法は民主党案のことでしょう。小川敏夫参議院議員(元法務大臣)が法制局と練った案です。これをたたき台として各党で練り直すことになっていて、共産党は憲法に抵触しようがないこの法案で行くということのよう。

維新の党

いわゆるヘイトスピーチについて、国連人種差別撤廃委員会からの勧告の趣旨も踏まえつつ、規制のあり方を具体化する。

橋本徹は表現規制には反対であり、そこでいくつかの案を出していたわけですが、実のところ、民事裁判の援助をする案は相当厳しそうです。法学家の意見を聞いて、私自身、その難しさを理解しました。このままフェードアウトすると思うので、ここでその難しさを説明するのは省略。

それでも実施する可能性はゼロではないですが、両立する話ですので、国政としては民主党案に乗るのではなかかろうか。

社民党

差別や敵意を煽る「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」を規制する「人種差別禁止法」を制定します。

「ヘイトスピーチを規制する」というところは、現行民主党案とはズレていますが、独自案を出すとは思えず、ちゃんと理解していないんじゃないかな。

社民党はよくわからないですが、結局は民主党案に合流するのだろうと思います。

しかし、ネイキッドロフトのあとで聞いた話によると、「民主党案では効力がない」と言っている人がいるみたいです。んなことはないって。たぶん、刑事罰を入れないと納得できないあまりに、冷静に考えられなくなっているんでしょう。

すでに書いたように、理念法でも、民事裁判がスムーズに進み、これまで以上の損害賠償金の支払いが命じられることになります。条例制定、改正の根拠にもなります。制定・改正しなくても、施設の条例、公園条例に「法に反する内容に貸さない」という旨の条文がすでにある自治体であれば、自動的にこれに該当します。

また、「あれはステップとして評価する」と言う人たちもいますけど、そういうことを言うから、皆、警戒するのです。「先々、処罰規定を盛り込んで表現規制までするつもりか」と。どうしても処罰したい欲望にかられている人たちは、邪魔だから、しばらく黙っていた方がいいと思うな。通るものも通らなくなります。

ただし、この法案でヘイトデモに対して即効性があるかと言えばたしかに難しい。施設の条例はデモに関係ないですし、デモのスタートと解散は必ずしも公園である必要はありません。当然、街宣に対しては効力がない。

オリンピックを控えた自民党としてはこれではまずい。

ところが、おかしなことに自民党のマニフェストにはヘイトスピーチの文字がありません。すでに書いたように、オリンピックに向けて、自民党はヘイトスピーチを潰すのが絶対条件であり、だからこそ、ああもプロジェクトチームを大々的にぶちあげたわけです。それがマニフェストにはない。どういうことでしょうか。

 

在特会とその類似団体を確実に潰す方法

 

vivanon_sentenceネイキッドでも、山口祐二郎が「ヘイトスピーチ規制法を警察は望んでいない」という話を聞いたと言ってました。さすが警察情報に強い。ここまで書いてきたように、デモに対して、警察にとっては使えない法律、使いにくい法律ってことです。そのくせ、「何をしているのか」と批判だけはされる。警察庁は当然これに反対しますし、警察庁が反対すれば、無理に通すことはできない。

警察としては、まだしもヘイトクライム法の方が運用が楽です。ヘイトクライム法であれば、傷害なり殺人なりの犯罪の取り調べの過程で、その背景に差別意識があったのか否かを調べることが可能ですから、既存の取り調べの延長で済みます。

 

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