松沢呉一のビバノン・ライフ

「外国人労働者を受け入れるか否か」ではなく「どう受け入れるのか」 -実習生制度とセックスワーク 1 (松沢呉一) -3,362文字-

「ビバノンライフ」スタートから1ヶ月

 

vivanon_sentence11月は15本公開してまして、書きすぎかと思わないではない。本数について多すぎると言われたことはないですが、「文字数が多すぎる」という意見もいただいてますし、「もっと軟らかい内容も書いて欲しい」という意見もあります。私はエロライターですから、そういうものを期待するムキもあるのでしょう。なぜか今年になって妙に売れた『ぐろぐろ』を読んだ方もいらっしゃいましょうしね。

ぐろぐろ (ちくま文庫)

先日、Facebookで闇市のパンパンについて書いたところ、面白がってくれた方々がいて、こういうものも書かないではないですけど、過去にさんざん書いているので、過去に書いてきたことの繰り返しにならざるを得ず、だったら過去のものを再録した方が早い。この辺のものは単行本にもほとんど収録されていませんので、新たに書くのと同時進行で、古いものを出そうかとも考えたりしています。

この「タグマ!」は有料ウェブマガジンですから、金を払う人が増えてもらわないと、運営も私も困ります。しかし、有料登録をしていない人でも読んで楽しめるもの、趣旨を理解できるものにしたいという思いもあって、初体験であるがために、そのバランスの取り方が難しくもあり、面白くもあり。

ご意見とアクセスデータを参照しつつ、なお模索中でありますが、要領が少しずつわかってきているので、今後ともよろしくお願いしますってことで。

 

日本における外国人労働者の現実

 

vivanon_sentenceでは、今回の本題です。

まずはこの動画。以下に続く私の文章は読まなくていいので、この動画だけでも観てください。

 

 

安田浩一氏が在特会に取り組むようになったきっかけがこの中で語られていますが、もともとは外国人労働者の問題が始まりです。安田氏としては、早いところ在特会の問題を片付けて、専門とも言える外国人労働者に議論を移行させたいのでしょう。今後、確実に在特会は解体していきますが、外国人労働者の問題は解決していません。むしろ、これから問題は深刻化していく可能性が高い。

カウンター参加者の一部にも、「外国人労働者の問題を今から議論し、その時代に備えておかないと、ゆくゆく慌てることになる」という問題意識をもっているのがいます。レイシズムの視点でも、ここに注目しておかないわけにはいきません。ヨーロッパを見ても、排外主義の高まりは、外国人労働者の受け入れと深く関係しています。韓国でも、中国から来た朝鮮族の労働者が差別に晒されている。もともと同じ民族であるにもかかわらず。

労働力確保のため、日本は外国人の受け入れをするしかない。さもなければ産業が成立しない。税収も維持できないため、インフラも福祉も崩壊します。「外国人労働者を受け入れるか否か」という議論はすでに意味がない。受け入れることを前提として、「どう受け入れるのか」の段階です。

そこに失敗すると、排外主義は今の比ではなく強まります。最大限うまく言ったとしても、排外主義の高まりを完全に抑えることは困難です。あるいは、在特会のような意識しやすい形ではなく、より陰湿な形で、この国を覆うかもしれない。法整備は在特会のような存在に対する対処療法としてではなく、労働者の受け入れとその労働環境、生活環境を見据えたものにすべきではないかとの思いを最近強めています。

しかし、現実には、国籍以外はかなりまで日本人である在日コリアンさえ受け入れられていない。この先、言葉も通じず、文化も違い、体験も共有していない外国人たちとどうやってうまくやっていくことができるのでありましょうか。

ここまでごまかしごまかし、見ないように見ないようにしてきた問題から、日本はもう逃れられない。早いところ、在特会の問題を片付けて、次に進まないと手遅れになりかねない。

これは政府や企業だけの問題ではなく、我々自身の問題です。いくら法律を整備しても、国民自身が取り組まないと、問題は決して解消されないでしょう。

ここまでの、そして、現在も続くこの国のごまかしの典型が、この番組で取り上げられている研修生、実習生制度です(以下、現行制度にまとめて「実習生制度」としておきます)。外国人労働者の問題は多岐にわたりますが、その筆頭がこの制度です。日本は外国人の単純労働者を受け入れていないながら、実際には技術を学ぶことを名目とした安くこき使える実習生という存在が単純労働を担っています。労働者ではないので、労働者以下の条件で働き、本来の目的である技術を学ぶことは望むべくもない。

売る売らないはワタシが決める―売春肯定宣言

実習生制度については私が語るまでもなく、この番組や安田さんの著書を読んでいただいた方がいいと思いますが、私もまたセックスワークのからみで何度か触れてきています。今現在手に入るものとしては、『売る売らないはワタシが決める』(ポット出版)でも簡単に触れていたかもしれません。

以下の話は、今まで書いてきたことのまとめのようなものでしかないことをお断りしておきます。のりかえねっと関係者にこそ、我が批判対象が存在していそうですけど、長年の私のスタンスでありますから、改めてやっておきます。

 

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