松沢呉一のビバノン・ライフ

テレビ局が無断で他者の著作物を利用する方法・・民放とNHKの場合 -報道と著作権の微妙なライン[2] (松沢呉一) -3,530文字-

報道番組が無断、無料で他者の著作物を利用する方法

 

vivanon_sentence前回説明したように、報道番組においては、一定のルールの範囲内で、著作物を無断で利用することが可能です。

YouTubeにイスラム国が人質の動画をアップした場合、写された対象も報じるべき内容ですけど、同時に、動画自体が報じる対象ですから、「イスラム国は、これこれこのような動画をYouTubeで公開しました」として無断で報じることが可能。

著作権法 しかし、地震の際に、その被害状況を撮影した写真や動画をインターネットに上げ、それをテレビ局が使用する際には許諾が必要です。テレビ局が報じる「事件」は、そこに撮影された風景や建物であり、写真や動画という著作物ではないからです。

この場合も「どこそこで震度5の地震があり、インターネットでは次々と動画や写真がアップされております」として、「災害時に機能するインターネット」というところに焦点を当てた報道をすればいいわけです。

条文を見る限り、以上のようになると思われます。

では、問題になったTwitterに上げられた写真をNHKが無断で使用した例はどうなのか。ほぼアウトでしょ。写真という著作物が事件を構成したのでなく、報道の対象ではありません。しかも、たんなる背景に使っただけのようです。Twitterの利用規約で、著作権を放棄するといった条項があれば別として、そんなものはなく、Twitter社はそこに介入をしないということになっています。つまり、権利者と利用者が勝手にやれと。

ただ、「アウト」と断定できるかどうかにはなお微妙な点があり、また、こういう場合に法に触れているのだとしても、許されるケースがあるんだと思います。その辺を含めて、テレビの報道番組でYouTube等から動画を拾ったり、Twitterなどから写真を拾う場合、実際にはどういう考えのもと、どうしているのか。現場のスタッフに話を聞いてみました。

next_vivanon

(残り 2772文字/全文: 3573文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ