松沢呉一のビバノン・ライフ

包茎自慢の男たち -知られざる包茎サークルの実態 [ビバノン循環湯 2] (松沢呉一) -2,263文字-

今回の「ビバノン循環湯」もメルマガに出したもの。5年くらい前になろうか。爽やかな話だが、爽やかな話が苦手な方は決して読まないように。

 

 

変態のクニオさん

 

vivanon_sentence真性包茎だった猫ひろしは山の手形成クリニックで手術を受けて、同クリニックの広告塔となっている。

しかし、ちょっと待っていただきたい。手術は、「スナイパーEVE」に登場しているクニオさんのインタビューを読んでからでも遅くはない。

クニオさんはチンコにいっぱいピアスを入れている67歳だ。それで毎週銭湯に行っているくらいで、大変オープンな人である。何の仕事をしているのかを雑誌で書くのはNGだが、ある分野ではけっこう名のある人のようだ。また、社会貢献もいっぱいやっている。NHK教育のドキュメンタリー番組や24時間テレビに取りあげられてもいいような人なのだ。

なのに、このインタビューの日も、会議室で全裸になって、女性編集者(「スナイパーEVE」を出しているワイレア出版ではなく、ミリオン出版の編集者を呼んだ)に管を入れてもらって喜んでいた。肛門じゃなくて、尿道である。この日は3メートルくらいだったが、家だと8メートルくらい入るそうだ。家でやる時は奥さんに入れてもらっている。疑いのない変態夫婦。

中学の時からハメていた奥さんとは今もセックスしていて、ソープランドにも行っている。それでもなお夢精をする。いったい何がどうなっているんだろ。

 

 

包茎の価値を転換する会

 

vivanon_sentence3時間半もインタビューしてしまい、どの話も面白いが、この人の話で私がもっとも好きなのは、自分が属している包茎サークルである。こんなサークルがあったとは。

時々会合があって、そこでは皆さん全裸になって堂々と包茎自慢をしたり、皮を使った遊びをする。ゲイの世界でもやるようだが、チンコの皮で相手のチンコを包み込んで、中でオシッコをする。皮が張りついているので、オシッコは漏れず、オシッコの温かみで二人は一体感を得る。包茎サークルにおいては同志の儀式みたいなものだ。

女性の参加者もいて、女性の場合は陰唇が伸びていることが条件。陰唇でビール瓶を包み込んで、手を使わずにグラスに注ぐ。何事も訓練である。

ここでは皮が長ければ長いほどいいので、包茎の皮を計る時は、できるだけ皮を伸ばす。見栄を張るわけだ。もっとも長い人では、余った皮が12センチもあって、この世界のカリスマだそうだ。カリスマ包茎。

この歳になって、そんなことをしなくてもいのではないかと思うのだが、クニオさんは銭湯に行く時は、知り合いに見られるかもしれないので、念のため、チンコをむいておく。

「すぐ戻っちゃうんだけどさ」

銭湯に行く時は、そんなことよりチンコのピアスを気にした方がいいのではないかと思う。

普段は包茎を気にしているクニオさんだが、包茎サークルでは、そんなことをしていることはオクビにも出さない。ここでは恥ずかしがることこそ恥ずかしい行為だ。

 

チンコの皮にも人権を

 

vivanon_sentence包茎サークルは、ズルむけでも参加はできるのだが、誰も相手にしないので、肩身の狭い思いをする。手術の痕が見つかったら裏切り者扱いとしてリンチされかねない。素晴らしい。ここでは価値が180度転換している

真性包茎では恥垢が溜まって硬くなる不都合があるため、中に水を流し込んで洗う必要があって、今までは病院でやってもらっていたのだが、今は家庭で簡易にできる器具が売られている。それについての情報交換もしっかりなされている。不都合は不都合として受け止めて、それを解消する努力もしているのである。

だったら包茎を治せばいいという話になるわけだが、包茎にプライドをもっている人たちだから、そんなバカなことはしない。親からもらった包茎になんてことをするのかと。

以前アメリカで、自分の承諾なく生まれてすぐに割礼されたことに対して訴訟を起こした人がいたと記憶する。

 

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