松沢呉一のビバノン・ライフ

女王様インタビューの捏造疑惑—[娼婦の無許可撮影を考える 9 ]松沢呉一 -2,247文字-

セックスワーカーの人権侵害をする女たち-[娼婦の無許可撮影を考える 8]」の続きです。

 

週刊誌の捏造疑惑

 

vivanon_sentenceこれも経緯を書いたものがあるので、そのうち「ビバノンライフ」で再録してやろうかと思いますが、新聞社系週刊誌が、その世界を知っている者からすると実在するとは思いにくい女王様のインタビューを掲載していたことがあります(記事の中の一部なので、コメントと言った方がいいか)。女王様業をやっている人たちのすべてを知っているはずもないですから、確証はないのですが、その記事が作られる経緯からしても、内容からしても、限りなく怪しい。

この記事は私も取材されており、記者に「この人物は実在するのか」と質問を送ったのですが、回答はありませんでした。回答がなかったことで、答えられない事情があったのだろうと推測するしかありません。

そういうことをやりかねないメディア、あるいは個人が存在します。他のジャンルではやらないでしょうが、所詮性風俗ってことでしょう。これが捏造ではないかとの疑惑が生じても、とくに騒がれることもない。社会全体が、所詮性風俗と思っているからです。

風俗店が摘発されると、逮捕時の様子が報道されます。何度も私の知り合いたちの顔が晒されています。男だけでなく、女でも経営者であれば報道されて、年齢や本名、顔を晒されます。これに対しても納得しにくいものがありながらも、文句はつけにくい。違法だからです。

売防法や風営法違反のように、法的には具体的被害者が存在しない犯罪の場合に、ここまで警察とメディアが協力して、逮捕されただけで制裁を加えるのは、そもそも不当ではないのかとの思いが私にはあります。刑法175条違反も同様です。それでも犯罪ですから、一律に顔や名前まで報道しているだけだというのがメディアの主張でしょう。だったら、法律を変えるしかない。

 

 

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