松沢呉一のビバノン・ライフ

著作権者不明の著作物をどう使うか—ゆるゆる著作権講座-(松沢呉一) -2,605文字-

 

 

法律で考えるべきことと、そうではないこと

 

vivanon_sentenceここまで何度か著作権のことを書いてきましたが、とくに「廃墟写真事件に見る法とモラルの境界線」について「法律の観点だけではない著作権の解説が面白かったので、シリーズ化して欲しい」という要望をいだだきました。内輪の要望ですけど。

著作権そのものについてはそれこそ弁護士さんたちが書いていることを検索して読めばいいわけで、私の出番ではないのですけど、法律家は「バカ、いちいち法律を持ち出すなよ」「ここは法律を無視していいんじゃね?」とは言いにくいので、私の出番があるかもしれない。

実際、なんでもかんでも法律に依拠する風潮が進んでいるようにも思い、由々しき事態です。「東京都写真美術館の責任範囲」に書いたように、法律を厳密に履行しようとすると、大変息苦しいことになっていきますので、「基本を踏まえてアバウトに」というのが私の方針。

しかし、ただのアバウトはダメです。大橋仁になります。ああいうことがあると、ルールを厳密に適用したがる人たちが出てきてしまい、それに対抗できなくなるので、やってはいけないことはやってはいけない。

その判断基準になるのは法律だったり、それ以外の規範だったりするわけですが、法律を遵守することが時には他の規範に反することもあります。

その辺をどう考えたらいいのかは弁護士も教えてくれません。

たとえば昨日Googleのアラートで流れてきた「NEWSポストセブン」の記事

 

 

スクリーンショット(2015-01-15 3.59.02)

 

 

これ以降最後まで、弁護士は「料理が著作物として認められるケース」について論じています。弁護士の回答はこれでOK。そういう質問なのですし。

しかし、著作物として認められる料理なんて現実にはほとんどないわけです。料理を高く積み上げて「新宿西口」と命名した宴会料理だったり、ショーウィンドーに飾るためのオブジェみたいなケーキだったらあり得るとして。

法的に保護され得る料理は、著作物としてではなく、もっぱら意匠としてでしょう。どっかの饅頭屋が意匠登録している商品と類似した商品を出すとひっかかる。これはよく裁判にもなってますが、意匠登録している饅頭の写真を撮って公開しても問題なし。宣伝になるので、むしろそうして欲しいでしょう。

つまり、法律を考えるなら、料理の写真を撮って公開してもほとんど問題はない。

じゃあ、撮っていいかと言うとそんなことはない。法律にはなっていないルールがさまざま存在しているわけですから。

 

 

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