松沢呉一のビバノン・ライフ

自己責任の意味-イラク人質事件の際に書いたもの [ビバノン循環湯 20] (松沢呉一) -7,053文字-

先日のロフトラジオで人質問題について振られて「興味ない」と答えてしまいましたが、このところ、私はずっと「ビバノンライフ」のため、古い自分の原稿を読み直すことに忙殺されていて、それ以外のことすべてに興味がないのです。

イスラム国による人質に対して「自己責任」「自業自得」という言葉が投げつけられ、家族がバッシングされていることくらいは知っているし、興味がないわけではない。しかし、2003年のイラクの時と一緒であり、うんざりします。少しは学習しろよ。

「なぜ自己責任や自業自得という言葉で済ませられるのか」については、いろんな解釈が可能だと思いますが、バカなのだと思います。考えが浅い。ちょっと考えれば、自己責任は、自分以外の他者に責任を負わせることができないということでしかない。一方、政府が救出するのは政府としての責務です。このふたつは両立します。それを理解できないくらいにバカなのです。責任というものが何なのかを考えたこともない連中。

これについては、イラクの人質事件の時に、ブログに「自業自得って…」と題した一文を書きました。私のところにくだらんメールが送られてきて、それを素材に「自己責任とはなんなのか」について、大変わかりやすく説明した文章かと思います。この文章はやたらとアクセスが多くて、今でも時々この文章について言及されることがあります。

しかし、短期間でこれは消しています。反響がうざかったので。「私の言いたかったこともこれです」「頑張ってください」「この通りだと思います」といった反響を見て、こっちにもうんざりしました。学級会で「佐藤君と同じです」「山本さんの意見でいいと思います」としか言わない人たちが大人になっても同じことをしている。こういう時にまで安直な言葉でただ同意するだけのコメントは不要であるばかりか邪魔です。

言いたいことがあるなら、それぞれが自分で言葉にすればいい。インターネットがあるのだから、誰でもそれを公表できる。それにはもちろんリスクがある。実名でやればいよいよリスクがある。それでも、それを皆がやるようになれば、責任というのがなんなのかもう少し理解ができるようになるはずです。

同じことを書くのが面倒だし、今は他のことで頭がいっぱいなので、これを循環して済ませますが、一部だけ読まれて、「この通りだと思います」とコメントがつくのがイヤなので、今回は購読者のみ読めるようにして、Facebookでの告知もしないでおきます。きっかけになったアホのメールは前後の文脈が今となってはわかりにくいため、削除しました。

このあと通常の更新を予定しています。

 

 

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