松沢呉一のビバノン・ライフ

人間の感覚は信用できない-歌舞伎町のラブホテル全制覇 2-[ビバノン循環湯 25] (松沢呉一) -3,363文字-

「歌舞伎町のラブホテル全制覇 1」で見たように、歌舞伎町のラブホでデータを出してみたら微妙な数字が出てしまいました。他の地域はいざ知らず、歌舞伎町に関しては、入口が下がっているラブホは、上がっているラブホよりたしかに多い。しかし、その差は客心理を踏まえたものではなく、より現実的な理由によって決定されている可能性が高そうです。

この調査によってはっきりしたのは「実際以上に我々はラブホの入口が下がっているような印象を抱いている」ということだけではないか。「我々は」と言っても、ラブホをよく利用している人たちだけのことであり、そう感じてしまうことにはおそらく理由があります。

 

 

ラブホの入口は見えにくいことに工夫あり

 

vivanon_sentence客の心理を踏まえた構造は、道からカップルが入るところが他の通行人から見えてもIMG_4012、その直後には見えなくなることにこそ確認できる。壁があるために奥が見えない、入ってすぐに自動ドアがあるなど。

フロントまでが道路から見える一般のホテルとはここが決定的に違う。いかに外から見えなくするかに工夫があるのだ。階段を上げていようと下げていようと、壁に遮られて外からは見えにくい構造になっているラブホが多いため、「入るか否か」の決定に影響しようがない。私は首を伸ばしたり、一歩踏み込んでいるから見えただけのことで。

ということは、下がっているラブホでも、ほとんどは「客が入りやすいから」という理由からそうしているわけではないことがわかる。外からはそのことが一瞥してわかるわけではないのだから。

なぜ我々は現実以上に「ラブホの入口は下がっている」と感じてしまうのかの秘密はここにあるようだ。暗く、狭いところに入り込んでいく時のイメージは「上がる」より「下がる」につながりやすい。実際には「上がる」になっていても、脳内では晴れやかで目立つ「上がる」ではなく、秘めたるイメージの「下がる」に変換されやすい。

これが、ラブホの入口は現実以上に下がっていると思えてしまう理由になっている。というのが我が仮説である。

 

 

下がる印象を作り出しているもの

 

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その印象を作り出している大きな要因がもうひとつある。もしかすると、そちらの方が大きな理由になっているかもしれない。

 

 

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