松沢呉一のビバノン・ライフ

佐藤秀峰のトラブルが起きた背景-表紙のギャラについて補足-ゆるゆる著作権講座 9-(松沢呉一) -2,537文字-

著作権侵害を非親告罪化する動きがいよいよ具体化か

 

vivanon_sentence売防法改正問題で頭がいっぱいのため、取り上げるのが遅くなりましたが、以前から言われていたように、TPPによる著作権侵害の非親告罪化が実現しそうな雲行きです。

 

TPP交渉 著作権侵害は「非親告罪」で調整

 TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉で、各国は映画や音楽などについて著作権侵害があった場合に原則、作者などの告訴がなくても起訴できるようにする「非親告罪」とする方向で調整を進めていることが分かりました。

適用範囲について各国が判断できる余地を残す案が示されたことで、これまで慎重な姿勢だった日本も受け入れる方針です。

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の知的財産を巡っては先月26日から今月1日にかけてニューヨークで開かれた首席交渉官会合の場で議論されました。
この分野では映画や音楽、書籍などの著作権の保護を巡って意見の対立が続いてきました。
特 に著作権の侵害があった場合に作者など被害を受けた人の告訴がなくても起訴できるようにする「非親告罪」とすることを巡ってアメリカなどが賛成する一方、 日本は国内でアニメや漫画などをアレンジした同人誌などの創作活動が取締りを受けるという懸念があることから慎重な姿勢をとってきました。
関係者によりますと、これまでの交渉で各国は営利目的などの場合の著作権侵害を原則、「非親告罪」とする方向で調整を進めていることが分かりました。
アメリカなどが柔軟な交渉姿勢を取り、適用範囲について各国が判断できる余地を残す案が示されたことで日本も受け入れる方針です。最も交渉が難航している知的財産の分野で各国が歩み寄る動きをみせていることで交渉全体の加速につながるかどうかが注目されています。

NHK

 

私のように「権利者にとってもメリットのある使い方をしていれば法律無視でもいい」という、ゆるい考え方が通用しなくなる可能性があるので、困ったもんだなと。これによって創作活動が萎縮してしまうと、「文化の発展」を目的とする著作権法の趣旨にも反します。
「ネットの自由」VS.著作権~TPPは、終わりの始まりなのか~ (光文社新書)
とは言え、厳密に法を運用して、そのすべてにおいて非親告罪化するわけもなく、「各国が判断できる余地」の部分で、創作活動を萎縮させないように適用範囲を限定し、かつ、現在ゆるく運用され、社会的にも容認されている「違法な創作」を合法化するってことになるんじゃないですかね。具体的にはフェアユースの導入やパロディの合法化です。

詳しくは、福井健策弁護士の「(これでも)超高速! TPP著作権問題の経緯と展望」を参照のこと。福井弁護士が念を押しているように、たしかに正確な情報を踏まえて発言をしないとロクなことにはならない。私ももう一度情報を精査してから発言するとして、今回は補足編です。

 

 表紙についてのざっくりとした基準

 

vivanon_sentence「佐藤秀峰の主張を改めて肯定する」について、単行本や文庫を担当している編集者たちに確認をしてみました。実際にどうなっているのかと。

聞いた範囲で、各社、明文化された基準はないようです。ま、そうでしょう。予算の中で、どこにどう割り振るかを経験に照らし、必要に応じて適宜決定している。その判断はおおむね担当者に委ねられているわけです。

とは言え、自然と基準はできています。

社内に制作部がある出版社では、デザインは原則社内で担当。そうじゃなけば外注になりますが、以下の基準はどちらのケースも共通しています。

next_vivanon

(残り 1227文字/全文: 2661文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ