プッシー・ライオットの新曲「I Can’t Breathe」から読み取るべきこと (松沢呉一) -3,269文字-
プッシー・ライオットの新譜「息ができない」
日本のメディアはプッシー・ライオットに関心が薄く、ソチオリンピックの際も、あれだけメディアがソチまで行っていながら取材をしていた社はほとんどありませんでした。外信を掲載しているメディアはありましたし、LGBTに対する取材をしていたメディアもありましたが、すぐそこで行われているプッシー・ライオットの抗議や拘束を取材していたメディアは私が見た範囲ではゼロだったと思います。すべて見られたわけではないので、ここでは「ほとんど」としておきますが。
とは言え、インターネットの時代ですから、海外の報道をチェックすることで、ナディア(Nadezhda Tolokonnikova)とマリア(Maria Alyokhina)の行動は即日知ることができ、ちょうど去年の今頃は、Facebookやメルマガでそれを伝える日々でありました。
しかし、なぜか今回は朝日新聞まで取り上げております。取材しないで書ける内容でしかないですけど、おそらくこれは今回の曲が取り上げたテーマによるものでしょう。
「反プーチン」バンド、米警察批判の新曲 黒人死亡事件
2015年2月20日17時57分
ロシアのプーチン大統領を批判する歌で知られるロシアのパンクバンド「プッシー・ライオット」が新曲「I Can’t Breathe(息ができない)」を発表した。米ニューヨークで昨夏、警察官に首を羽交い締めにされた後に死亡した黒人男性エリック・ガーナーさん(当時43)に捧げる歌詞で英語で歌われている。
「息ができない」は、たばこを路上で違法販売している疑いがあるとして取り締まりを受けたガーナーさんが死の直前に連呼した言葉。撮影された動画に克明に記録され、人種差別の象徴として全米の抗議運動で繰り返された。
曲の中では「息ができない」のほか、やはりガーナーさんが拘束の直前に警察官に発した言葉「君は出会うたびに私に嫌がらせをする。うんざりだ」「頼むから私を放っておいてくれ」も朗読されている。
米メディアによると、メンバーの2人は「エリックさんのほか、世界各地で国家権力に苦しんでいる人たち、変化のために闘っている人たちへの曲だ」との趣旨の声明も出している。(ニューヨーク=金成隆一)
Pussy Riot/I Can’t Breathe
以下が警察に首を絞められたエリック・ガーナーさんが「I can’t breathe」と繰り返している現場の動画。こういうのも「残酷だ」と言う人がいるのかもしれず、そういう人たちは決して見ないように。
まったくの無抵抗。武器を持っているようには見えず、違法に煙草を販売した容疑で、どうしてここまで。
抗議行動の様子。
‘I am Eric Garner’のプラカードとコール。
プッシー・ライオットの「I Can’t Breathe」で、エリック・ガーナーさんの言葉はリチャード・ヘルが担当。
他にヤー・ヤー・ヤーズのギタリスト、ニック・ジナーやマイク・スノーのヴォーカリスト、アンドリュー・ワイアットらが参加。
https://www.youtube.com/watch?v=mVWeqAPQUXc
というのが今回の新曲。
「FREE PUSSY RIOT TOKYO」はなぜうまくいかなかったのか
プッシー・ライオットについては、以前、「凡どどラジオ辞典」で結成経緯や活動についてまとめましたので、参考にしていただきたい。昨年6月に書いたものです。
この中でFREE PUSSY RIOT TOKYOに触れています。
ロシア大使館への抗議、支援コンサート、裁判費用を集めるためのイベントが各地で行われ、2012年11月 4日、日本でも表参道のクラブで「FREE PUSSY RIOT TOKYO」が開かれている。主催したのは日本に住んでいた英人女性。出演はChim↑Pom、毛利嘉孝、鶴見済、マダム・ボンジュール・ジャンジなど。
以下はその時に行われたパフォーマンス。
この日のことを思い出すと、なんとも苦い思いにとらわれます。
その日私は風邪気味だったので、最後までいませんでした。体調が悪くても、ともあれ行って入場料を払うのが最初からの目的で、観たい出し物を観た段階で「もういいか」と帰りました。
この日の様子を書いたメルマガの文章を読み直したら、金の心配をしています。私が帰ったあとで大量の人が入って来ない限り、おそらく有料入場者は100人台だったと思います。ざっと計算して、場所代をまともに払っていたら、金が残らんぞと。物販をしていたので、辛うじてその分で利益が出ているかもしれない程度。しかし、こういう趣旨のイベントなので、店側も優遇してくれているのだろうと思っていたわけです。
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