「新しいしがらみ」をどう創り出すか-六角橋商店街で考える(松沢呉一) -3,766文字-
六角橋から社会は変わる(かも)
針生和美さんが主催するデモクラシーワークショップの第七回の告知です。
『暮らしから政治を変える』
〜六角橋商店街ツアーと選挙に向けた作戦会議!〜ファシリテーターは、小林 野渉(こばやし のあ)さん。
そして、ゲストファシリテーターにライターの松沢 呉一さんをお呼びしてお話をお聞きします。小林さんは1986年、横須賀市生まれ。
祭デザイナー、ライター、そして今年、横浜、白楽の六角橋商店街で本と野菜のオルタナティヴ・スペース「Lan dry」(Twitter→ @landry_yokohama )をオープンされています。 (略)
若い世代にはどうしても敬遠しがちな地域のコミュニティ
ーですが、その実態と可能性について、小林さんが活動の 場にしている六角橋商店街の一角にて、具体的な選挙に向 けた「作戦会議」をしたいと思います! そして、「しがらみを否定してきたから選挙に勝てない」
と、おっしゃる松沢さんには「如何に選挙において、地域 での地道な活動が大切か」についてと、投票率を上げる為 に、今何が必要なのかもお聞きしたいと思います。 地域で活動をされている20代の小林さんと、「投票率を上げるためには、ネットのしがらみを使って、投票に行かざるを得なくすることの方がおそらく早いだろうと思われます。」とおっしゃる50代の松沢さんのお話はどこに落ち着くのか予測できません。「今の政治、なんとかしたい!」と思ってはいるものの、
「じゃあどうやればいいの?」と思うのは誰もが持つ疑問 だと思います。 今回の「作戦会議」に、少なからず具体的なヒントになる
事があるのではないかと思います。 (略)
日時・2015年3月7日(土) 13時30分集合
集合場所・ギャラリーMOON CAT前
東急東横線 「白楽駅」西口下車 徒歩3分
アクセスはこちら↓
http://www.kazemaru.net/tenpo/2010mooncat.html
※お話の会場もこちらです。参加費・1000円
この週末には定員に達しそうなのですが、ここでの話は今後の政治、今後の社会にとって、非常に重要な内容になろうかと思います。と大上段に振りかぶってみましたが、ホントの話です。
告知はここまでとして、参加しない方々のために、ここで話すことを軽くまとめておきます。
商店街を再生させるには「新しい人」が必要
六角橋商店街のことは全然知らなかったのですが、相当面白いことになっているらしいですよ。サイトに出ている以外にも、良識派に批判されそうなイベントもやっていて、大変好ましい。街には猥雑さが必要です。
小林さんはそこを拠点に活動をしているわけですけど、この地の出身ではありません。ここは大事。
古い商店街が死にかけている中、活気のある商店街はしばしば外からの人材が新しい動きを起こしています。代々続いている店を既存の顧客を相手にして既存の商売で維持できる時代ではなくて、そんなやり方では資本力のあるスーパー、量販店、コンビニ、通販に負けるのは当然。新しい住民は品揃えが悪く、値段の高い店でわざわざ買う義理などありませんから。
日本の都市は新しい住民がメインになってきている以上、新しい住民に対応しないと商店は生き残れないし、人口が減っていく中、よそからの客を呼び込まないと生き残れない。
夏はヘビ探し、冬は銭湯めぐりで、都内各所を歩き、ついでに商店街を見て回っていると、ほとんど死んでしまっている商店街が東京にも多数あることに気づきます。しかし、高円寺のように元気な商店街もあります。ここでも新しい住民たちが入ってくることによってこそ活性化していますし、古くからある商店も生き残るために、しっかり努力をしています。
高円寺には小杉湯となみのゆという二大名物銭湯があり(新高円寺にもいい銭湯があります)、どっちも積極的に打って出る戦略で多くの客を集めております。銭湯が息も絶え絶えの時代に、人がいっぱいで、驚きますよ。
私もそうですが、住民じゃなくても入りに来る。これも商店街に魅力があるからで、買い物をして、ライブを見て、友だちと会ってメシを食ったり酒を飲んだりして、ついでに風呂にも入っていく。そうじゃない街でいくら銭湯が頑張っても人は来ない。
右は小杉湯で、入口はギャラリーになっていて、ギャラリーに来たついでに風呂に入っていく。風呂に入ることで、またコミュニティが拡大する。
銭湯だけじゃなく、高円寺には旧住民による店も多数残っていて、その間に大資本のコンビニやスーパー、チェーンの飲食店があり、さらには新しくやってきた個人経営による店があり、それらが渾然として活気を作り出しています。古いコミュニティの上に新しい層が幾重にもかぶさっている印象です。
今は中野ブロードウェイにあるタコシェですが、その前は高円寺にあって、当時は私も店員をやっていました。これもたまたまで、スタッフは誰も高円寺の住民ではありません。
新しい層のひとつは「素人の乱」だったりします。「素人の乱」周辺には高円寺で生まれ育った人たちもいますけど、学生時代に住み着いた人たちや高円寺に住んだことのない人たちもいます。新住民、あるいは非住民による新しい地域コミュニティです。
「素人の乱」が東北大震災のあとの閉塞した空気に風穴を空けた高円寺デモを実行できたのは、街があったからなんだと思います。街があって、コミュニティがある。「素人の乱」はたんに店を経営するのではなく、人を集め、育て、つなぐ作業をちゃんとやってきた。さらにはゲストハウスまでやって、海外からも人を呼び込んでいる。いざという時はまたいつでも動ける。
地元で孤立しているわけでもなく、商店会ともうまくやっている。「素人の乱」が拠点としている北中商店街の活気は、多数ある高円寺の全商店街を巻き込んでいます。商店街にはこういう牽引力必要です。
たしかに高円寺は特殊な街です。もとはと言えば関東大震災で焼け出された人たちが高円寺に移り住んだということもあって、新住民が旧住民化している街ですから、排他性が薄い。よそから持ってきた阿波踊りが高円寺の伝統行事になりつつあることがこの街を象徴していてます。古いアパートも残っているので、海外からの住民も多くて、インド人やタイ人からいきなり声をかけられたりもします。長くなるので省略しますが、あの街は自治の意識が強い。その上で行政ともうまくやっている。
そんな高円寺のやり方をどこでも真似できるわけではないですが、力をなくしている商店街でこそ、新しい世代、新しい住民が力を得て、街を再生させることができることを示唆します。
しがらみの消えた社会で新しいしがらみを
これがどうして選挙に関係があるのか。
ポリタスに書いた「しがらみが消えた社会で人は投票しなくなる」をお読みいただきたい。この一文は錚々たる書き手が居並ぶ中で、万単位の方が読んでくれたようで、ここからもう少し具体的な議論と実践をやっていくべきだろうと思っています。
(残り 922文字/全文: 3845文字)
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