混血児は生まれてすぐに殺されていたという噂-日本における黒人差別 4-(松沢呉一)-3,019文字-
米国のみでヒットした江利チエミの「ゴメンナサイ」-日本における黒人差別 1
なぜオンリーたちは子どもを産んだのか-日本における黒人差別 3
の続きです。とりあえず、これで終わっておきますが、そのうち続きを書くかも。
闇から闇に消えた子どもたち、闇から闇に消えた記憶
『オンリーの貞操帯』によると、混血児の子どもはほとんどがオンリーの子どもでした。パンパンは子どもが欲しいなんて思わないわけですから、避妊もするし、妊娠すると堕胎をする。
しばしばこういう混血児はRAAの落とし子であるとしているものがあるのですが、米兵たちは病気の感染を恐れていたため、原則、コンドームを使用しています。実際には性病の蔓延を理由に、占領軍はRAAをオフリミットとしていたことから、コンドームを使用しないことも多かったと推測はできますが、女たちの側からすると、父親がどこの誰かもわからないのに出産をする必然性がありません。妊娠をしたら堕胎していたでしょう。
米兵に強姦されて妊娠したり、遊んでいるうちに妊娠するなどして、そのことを人にも言えず、病院にも行けず、出産してすぐに遺棄する事件も起きています。とくに既婚者の場合は、夫の子どもだと思っていたら、混血児だったということもあったようです。
こういう人たちは育てない。育てるのはオンリーだからです。前回説明したように、彼女たちはそうする必然性がありました。もちろん、オンリーも育てられなくなることが多かったわけですけど、産んですぐに捨てたりはしない。何事も例外はあるにせよ。
オンリーの中には結婚して渡米した人たちもいたわけですから、のちのちまで立川で子どもを抱えていたのは、これから結婚できるかもしれない層と見捨てられた層です。この本には悲惨な話が多数出てくるのは当然ではあって、うまくいった女たちはここには登場しません。
「除隊したら迎えに来る」と言われながら、そのまま捨てられるケース、米兵が戦死するケースでは、日々の生活のために売春でもするしかない。そうなると、子どもは手に余る。新しい相手を探す際にも邪魔になる。
「施設に預けると二度と子どもには会えない」という誤解のため、施設にも預けられない。パンパンをやろうにも混血児を預かってくれるところは少なく、足元を見られて法外な子守代をとられる。預かった側も見られることを嫌がり、外に出さない。
そのために調査しようにも、その存在を把握することが難しかったという事情もあるわけです。
※上の写真はシネマ通りの近くにあるナイトクラブ。昔は米兵が来ていたのではないかとも思うのですが、よくはわからんです。
混血児は生まれてすぐに殺されていた?
預かった先でも大事にはしないので、虐待で死亡したケースもあります。死亡したところで、出生届も出されていないのですから、闇から闇へと葬られた子どももいたことでしょう。
混血児は生まれてすぐに病院で殺したとの話もあります。
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