風営法をどう改正すればいいのか-ゲイバー摘発を受けて 2(松沢呉一)-2,929文字-
「どう対抗していくべきか-ゲイバー摘発を受けて 1」の続きです。
法改正しか方法はない
このまま警察が方針を変更しないと、次々と店が摘発されて、新宿二丁目は壊滅しかねない。ゴールデン街も壊滅しかねない。全国のスナックやバーも同様です。
現行法ではこれに対抗することは難しい。であるなら、法改正しかないでしょう。
法を正確に理解するのが面倒だからでしょうが、「風営法改正」なんて話になると、「風営法はいらない」と言い出すのが必ず出てきます。クラブの議論においてもそうでした。
そんなことは現実にはあり得ないですし、私はそれに反対します。もし風営法がなかったらどうなるか。「あなたの家の横にクラブやストリップ劇場、ゲームセンターができて、24時間営業していてもいいですか?」「学校や病院の横にパチンコ屋やソープランド、ラブホテルができてもいいですか?」って話です。そうなっていないのは、風営法とそれに関する条例が規制しているからです。
それでもいいという人たちは「風営法を廃止しろ」と言い続ければよろしい。もちろん、風営法をなくした上で、そうならない方法があるんだったら、提案すべきです。
「改正しろ」と主張する側が正確に法律を理解していないと、結局、警察庁が自分らに都合のいい方向の改正をするだけです。そうならないためには、最低限、法と世論を踏まえた主張をすべきです。
実際、風営法は面倒な法律ですから、理解するのは大変です。私もいまなおわかっていないところがありますし、間違ったことも書いてしまいます。間違いを見つけたらお知らせください。
それでもやらざるを得ず、ゲイバーの摘発があってから、ずっと「どう改正したらいいのか」を考えてました。
その答えが出たところで、実現する道のりが遠すぎます。今回の摘発を受けて、地域単位で存在している飲み屋の組合が声明を出し、署名を集め、改正のためにロビイングを始めるなんてことは起きそうにない。それがないと改正されるはずがないわけで、「どう改正したらいいのか」を考えても無駄になる公算が高いのではありますが、やるだけやっておきます。
酒を飲まず、クラブも行かない私が、酔っぱらいが酒を飲んで騒いで寝ている間に、こんなことを真剣に考えているんだから、生活がかかっている飲み屋の人たちやそこでさまざまな楽しみや慰安を得ている客たちも、少しは考えた方がいいと思うぞ。
※写真は二丁目にあった質屋。現在は駐車場
ふたつの改正の方向
詳しくは検索していただくか、関連書を読んでいただくとして、基本的なことを確認をしておきます。
摘発された店に限らず、二丁目のゲイバーのほぼすべては深夜酒類提供営業飲食店として届出をしています。ゲイバーに限らず、新宿に限らず、深夜まで営業する飲み屋はどこも同じです。ただし、アルコールを提供していても、通常主食と認められる食事を提供して営む営業はこの届けは不要。つまり、牛丼屋やファミレスがビールやワインを出していても届けは不要です。
深夜酒類提供営業は風営法で規定されていても、風俗営業ではありませんし、許可ではありません。届け出だけ。従業員が客と話し込む、ゲームなどをする、カラオケのデュエットをすることは接待営業となり、これは風俗営業の2号に該当し、許可が必要です。許可をとると時間や場所などについて、さまざまな制約があり、風俗営業の許可店が、同時に深夜酒類提供営業の届けを出すことはできませんので、2号許可の店は深夜の営業ができないわけです。
また、よく誤解している人たちがいますが、この風俗営業は性風俗営業とは風営法内でのジャンルが違います。「どうしてクラブがヘルスと一緒なんだよ」と言っている人たちがいましたが、一緒じゃないですから。
ヘルス、ソープランド、ストリップ劇場、ラブホテル、アダルトショップは性風俗特殊営業になります。キャバレー、キャバクラ、クラブ(ホステスのいるクラブ)、ラウンジ、待合、ダンスクラブ、ダンス教室、パチンコ屋、麻雀屋などが風俗営業になります。
ここを押えておいていただき、バーやスナックで話し込んだり、カラオケのデュエットをするだけで摘発される現状を変えるための改正は大きくふたつの方向があると思います。
接待営業を朝までできるようにする改正
ひとつめは「2号の営業時間を延長する」という方法です。
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