外国人入居不可を解消するために-法は万能か(松沢呉一)-3,109文字-
外国人不可のアパートをどう解消するのか
こういうケースをどう解消していったらいいのかについて、以前、メルマガで論じたことがあります。
【外国人入居拒否】 法務局、人権侵犯認めず アパートの「外国人不可」 仲介の大学生協は謝罪
入居を希望した京都市のアパートが「外国人不可」のため、賃貸契約できなかった欧州出身の20代の留学生が、法務省の京都地方法務局に外国人差別だとして救済措置を求めたところ、法務局は「人権侵犯の事実があったとまでは判断できない」と退けた。
不動産相談窓口でアパートを仲介した龍谷大(本部京都市)の生協は留学生に謝罪し、「外国人不可」の物件紹介を中止。大学
側も生協に改善を促した。留学生の支援者らから、法務局の対応を疑問視する声があがっている。
▽透明性欠く
法務省はヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれる外国人差別の街頭宣伝をなくそうと呼び掛けており、ホームページでは「外国人であることを理由に理容店が客を拒否した」というケースを人権侵害として紹介している。救済を求めた留学生に対しては、申し立てを認めなかった理由の説明を断った。留学生は「(法務局の対応は)透明性を欠いている」と批判している。
留学生は2013年1月、生協の窓口で京都市内のアパートを借りようとしたが、外国人を拒む家主側の意向を生協で伝えられた。法務局は14年9月、「侵犯事実不明確の決定をした」と留学生に通知。「生協には啓発を行った」とも伝えた。法務省の規
定では「啓発」は人権侵犯がない場合も実施できる。
だが、留学生は「多くの日本人はこれが差別だと思っていないのではないか。法的拘束力もない啓発だけで再発が防げるのか」と疑問を投げかけ、「日本文化を学んで成長の機会を得られたが、この問題では傷ついた」と振り返った。
▽不安解消
龍谷大生協の 堂免裕子 (どうめんゆうこ) 専務理事は、家主側は部屋を外国人に貸すことに「漠然とした不安」を感じているとみている。今回の問題をきっかけに、「外国人不可」の賃貸住宅の仲介をやめた。最近は、未払い家賃の補償制度や生活習慣をめぐるトラブルへの対応を、家主側に丁寧に説明しているという。堂免さんは「大学はいろいろな人を受け入れる。留学生に限らず多様性(ダイバーシティ)という観点が重要だ」と話す。(以下略)
共同通信の記者は見逃したのではないかと思うのですが、法務省のサイトでは「外国人であることを理由に理容店が客を拒否した」という例だけじゃなく、「アパートへの入居や公衆浴場での入浴を拒否された」という、そのものズバリの例も出ています。
以前から言っているように、表現に関わるヘイトスピーチ規制法には反対の私も、差別を禁ずる法律を制定することには賛成です。言葉の内容ではなく行為ですから、判定もさほど難しくはない。住むところがなけれぱ最悪死にます。これは速やかに改善しなければならんでしょ。
ただし、以前、メルマガで論じた時に、法で一律に処罰することにためらいが生じるケースをいくつかピックアップしました。まさにこのような入居拒否がそのひとつです。
「 漠然とした不安」は法では解消されない
こういう入居拒否の多くは、龍谷大生協の専務理事が言うように「漠然とした不安」が理由なのだと思います。
不動産会社が経営するマンションであれば法で処罰するのもありとして、たとえば英語なんてちいとも話せないおばあちゃんが家主なのだとすると、そのような不安を抱くのは理解できます。
一時間やそこらのことではなく、いったん入居すると、そう簡単には追い出せないのですから、入店お断りの理髪店や公衆浴場と違って、責められないように思います。
そのような不安がある以上、法律で規制したって、「外国人お断り」とは言わずに、別の名目で断るようになるだけじゃなかろうか。
その不安は漠然としたものではあるにしても、あえて具体的に言えば「生活習慣の違いでトラブルが起きるのではないか」「トラブルが起きた時に言葉が通じないのではないか」との不安だったりしましょう。
だったら、それ自体を解消する方法を探すべきではなかろうか。
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