松沢呉一のビバノン・ライフ

いい時期は必ず終わる-アナルのイブ・インタビュー 3-[ビバノン循環湯 57](松沢呉一)-5,956文字-

「商社の受付嬢からソープ嬢へ-アナルのイブ・インタビュー 1」

「好きでやっている人の方が絶対にうまいと思うんですね-アナルのイブ・インタビュー 2」

の続き。これでおしまいです。

 

 

遅番で八本、早番で十二本の時代 

 

vivanon_sentence—今もお客さんはほとんど本指名なんですよね。

「大半はそうです。たまに誰かの紹介とか、雑誌に出たときの雑誌指名もいます。一日に一人とか二人はフリーのお客さんもいますけどね。今は全部指名で埋まるということがないですから」

—客の絶対数が減ってますからね。

「そうです。一番儲かったときは二百四十本か二百五十本は指名があったと思う」

—えーっ!!

「バブルの一番いいとき。とくに人気がなくても、遅番で八本、早番で十二本くらい行ってましたから。うちの専務が言ってましたけど、一番稼げない子でも、百四十くらい稼いでいるって」

これはもちろんフリーを含めた数で、誰もがほとんどフル稼働だったのだ。

IMG_5469—二勤一休で、本指が二百四十本は限界ですよね。一日十本以上。

「でも、稼いでいた時は、月に一日しか休みませんでしたから」

—だって生理は?

「一番ひどい日をその一日にあてて。だってアタシ、アナル専門だったもんですから。後ろを使っていたから、生理の時でもけっこう大丈夫だったんです」

—ああ、そうか。それにしても、二十九日勤務。

「二十九日か三十日ですよね。その頃は早朝もやってましたし」

—えーっ、早朝から閉店までやってたの?

「そうです。夏だと朝四時からです」

今も早朝勤務は、深夜一時頃から三時間ほど店で寝てすぐに仕事というパターンが多い。そのあと早番と交替して仕事が終わるわけだが、イブさんの場合はそのまんま夜まで仕事。

—それもお金のため?

「だって、暇な時間があると、ロクなことを考えないじゃないですか」

—暇があると、お金を使っちゃうし。

「そうですよ。ソープランドの子がお店をよく辞めますでしょ。あれは稼げないから辞める。それが一番の理由」

—あとは人間関係。

「でも、自分がお客さまにずっと入りっぱなしだったら、人間関係はほとんど関係ないんです」

—控室でのトラブルとかあるじゃないですか。

「控室に座っている時間が長いと、そういうことが起きるんですね、だから、出勤してから帰るまで、控室にいる時間がまったくなければ、そういうことは起きようがない。暇をしている人たちがやっかむ。そういう話を聞いたところで、“悔しいなら、自分も仕事をすれば”と私は思うだけです」

—稼げていれば店にも不満は生じにくいし。

「そうですよ」

実際には忙しすぎるとして店を移動するのもいるのだが。

—今も控室には行かない?

「いや、今は暇ですから、そんなことないですけど、控室に行くようになったのはバブル崩壊以来です。いい頃は出勤してから帰るまで他の女の子と合わないことがよくありました」

 ※きれいになった吉原弁財天。この弁天様の絵は芸大の学生たちによるもの。

 

 

センスが決める

 

vivanon_sentence暇だから人気をやっかみ、暇だからトラブる。稼げていると移動はしない。例外はあれども真理かと思う。

—吉原では、ずっとこの店ですか?

「ええ、この一軒です。稼げたからいただけですけど、他に移る必要がありませんでしたから」

いかにアナルプレイが受けたからと言って、それだけで長い間トップでい続けることは難しい。

—長年トップを走り続けてこられた秘訣はなんですか。

 

 

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