松沢呉一のビバノン・ライフ

おめでとうございます(皮肉)-風営法改正案間もなく成立の見込み(松沢呉一)-2,740文字-

風営法改正案が衆院内閣委員会で可決

 

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風営法改正案が間もなく衆院本会議で可決され、参院でも可決されるでしょう。風営法改正に動いた皆さん、おめでとうございます。

反対に回った共産党の立場を「赤旗」で見てみましょう。

 

権力乱用防止保証ない

穀田氏 「ダンス規制法」改定で指摘

「ダンス規制法(風営法)」改定案が27日、衆院内閣委員会で日本共産党を除く賛成多数で可決されました。日本共産党の穀田恵二衆院議員は採決に先だち質問し、「権力乱用を防止する保証がない」と問題点を指摘しました。池内さおり議員が反対討論しました。

穀田氏は、大阪の元クラブ経営者が同法違反での摘発を不服として訴え、地裁・高裁ともに無罪となった判決を示し、「警察庁による恣意(しい)的な 判断が今回の事態を招き、それが裁判を通して断罪された」と指摘。同法を根拠に近年相次いだダンスクラブへの摘発は、「法律を拡大解釈して権力をふるい、 ダンス文化を萎縮させ、まじめな経営者から事業を奪った。大変な職権乱用だった」と批判しました。

ダンスクラブ摘発の根拠となっていた風営法をめぐっては、「レッツダンス署名推進委員会」が改正を求めて2012年に16万人分の請願署名を国会に提出。国会でも超党派の議員連盟が結成され法改正へ向けた議論が行われてきました。改定案では「ダンス」の文言がすべて削除されることになりました。し かし、新たに許可制の「特定遊興飲食店営業」というカテゴリーがつくられ、クラブのダンスも含め、遊興の名のもとに規制されることになります。

穀田氏は「ダンス削除は当然のことであり、この間の運動などの成果だ。しかし警察によるダンスの恣意的判断が断罪されたのに、同じ警察により定義 が曖昧なまま深夜遊興に対する規制が強化される。その目的が不明確であり、対象が一層広がり罰則も厳しくなる。誤った摘発をさらに広範囲に引き起こすことになる」と指摘しました。

5月28日付「赤旗」

 

この改正で起きること

 

vivanon_sentenceここまで「ビバノン」を読んできた方は、すんなりこの記事が意味するところが理解できましょうが、風営法の表面から「ダンス」という文言は消えても、クラブは「特定遊興飲食店」として風営法の対象として留まります。今までのように三号の許可は不要ですが、こちらの許可が必要になるわけです。

クラブ業界が望んだ結果ですから、これはいいとして、そのため、他業種もまたこの影響を受けて、現状、深夜酒類提供営業の届けで営業している店のうち、グレー営業をしていた遊興飲食店は許可が必要になります。グレーがはっきり違法営業にされて、無許可営業はいつでも摘発される状態になります。

具体的にはオールナイト営業をしているライブハウス、スポーツバーの類は許可をとらなければならなくなります。「対象が一層広がり罰則も厳しくなる。誤った摘発をさらに広範囲に引き起こすことになる」とある通り。

今まで曖昧にされていたジャンルがIMG_6886クリアになったとも言えて、許可をとれば朝まで合法的に営業できるのですし、深夜営業をしない飲食店で客を踊らせても違法営業ではないので、「よかったよかった」と見ることも可能です。社交ダンスの教室やホールはほぼ完全に外れますので、これは間違いなく「よかったよかった」でしょう。

だからこそ、共産党以外は賛成に回りました。

しかし、この対象となる範囲は広大であり、大きな画面で映像を見せている店、ステージがあるようなカラオケ設備のある店なども対象になりえて、それらの店の中には、許可をとろうにも要件を満たさず、そもそも許可をとれない地域に該当する店では無許可営業を続けるか、深夜営業をやめるか、遊興営業をやめるか、廃業するしかない。

もうこの流れを止めることはできないですから、この改正を前提に対応を練るしかありません。詳しくは、ここまで「ビバノン」に書いてきたことを参照のこと。

もちろん、警察のことですから、一気にこのジャンルを潰すようなことをせず、原則黙認、いざという時は恣意的に適用してくると思います。警察にとってはそれが一番おいしい。

ただし、クラブに関しては無許可営業でガンガン摘発をしてくる可能性が高い。「おまえらの望み通りに改正されたのに、まだ無許可でやっているのか」ってことですから、警察もためらわず、世論も味方にはならない。世間もメディアも性風俗店の摘発に同情しないのと同じ状況になりましょう。許可をとったところで些細な違反を突かれたりもしそうですので、油断しないように。

 

 

どこにミスがあったのか

 

vivanon_sentence事の推移もここにある通りで、「風営法からダンスを外せ」という方針がぶち上げられた結果がこの改正です。警察庁がこの方針にうまく乗じたとも言えるのですが、必然的にこうなるということでもあって、そもそもの方針に無理があったのです。

 

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