松沢呉一のビバノン・ライフ

韓国におけるキリスト教-ソウル・クィア・パレード 5(松沢呉一) -2,570文字-

低劣な差別者に有効なのはハグか罵倒か無視か-ソウル・クィア・パレード 4」の続きです。

 

 

韓国で最初に見たこと

 

vivanon_sentence日本にいてもそうなのですが、私は知らない場所を歩くのが大好きです。とくに迷うのが好き。今自分がどこにいるのかわからないと至福の時を過ごせます。

ソウルではしばしば至福の時間を過ごせました。

空港に着いてすぐに金相佑君に電話。

「空港に着いたんだけど、このあとはどこに行ったらいいと思う?」

「そうですね。まずは地下鉄に乗ってソウル駅に行ってはどうでしょう。ホームレスがいっぱいいますので、その様子を見てきてください」

「ここからソウル駅までは歩けるのか?」

「60キロあるので無理です。電車で一本です」

ということで、ソウル駅に向かいましたDSCN0026。「あの野郎、デート中だったので、いい加減なことを言いやがって」と思いつつ、他に行くあてもなく。

どうせMERS騒ぎでどこもホテルは空いていると思って宿を決めておらず、ソウル駅周辺に泊まればいいか。ソウル駅ならどこに行くにも便利でもあります。

左の写真は旧ソウル駅舎です。新しい駅舎は商業施設と一体化したガラス張りの建物で面白みがなく、こちらの方が風格があります。現在はギャラリーとして使用されているようです。

レンガのため、東京駅を彷彿とさせますが、日本統治時代に日本人の設計によって造られたものだそうです。これに限らず、ソウルにはレンガの建物が多い。大きな地震がないためで、安アパートでもレンガ造りなので、シャレてます。

DSCN0025

上の写真にも見えてますが、金君が言う通り、ソウル駅前にはホームレスが多数いました。酒盛りをしている集団もいますし、地面にゴロゴロ人が寝ていたりもします。段ボールも新聞紙も敷いてません。冬の厳寒をどう越すのでありましょうか。ちゅうか、もう死んでるんじゃないかと思わないではないですが、誰もそれを気にする様子はなく通り過ぎていきます。

なぜソウル駅にホームレスが集まったのかについては、のちに桜井信栄さんに解説をしてもらいましたが、メモしていなかったので、内容は全部忘れました(ひどい)。

金君はここを私に推奨して、祖国の何を見せたかったのでありましょう。とくに何も考えてないようにも思いますが、たしかにこれは韓国の一側面です。

 

 

厳しい競争社会からこぼれ落ちる人々

 

vivanon_sentence経済発展を遂げる一方で、格差が拡大し、失業率も高い。学歴がものを言う社会のため、大学進学率は男女ともに日本の比ではなく高い。その結果、大学を卒業しても仕事に就けない層を生み出し、競争に敗れたものたちは引きこもるか自殺をする。ソウル駅周辺にはこぎれいな格好をしたホームレスらしき若いのもチラホラいました。あの中には大卒もいるのかもしれない。

韓国の自殺率は日本よりもずっと多い。日本のように中高年の自殺だけじゃなく、若年層の自殺の多さが数字を底上げしています。自殺の背景にはさまざまな要因が加わりますし、国によって数値の出し方が違うため、比較は難しいのですが、もともと韓国では自殺は多くなかったそうなので、経済成長とおそらく密接に関係しています。厳しい社会なのです。

 

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