松沢呉一のビバノン・ライフ

箸の長さはなにで決まるか-個人領域と共有領域(松沢呉一) -3,211文字-

なぜ箸の長さが違うのか

 

vivanon_sentenceFacebookで箸についてちょっと書いたら、やたらと「いいね!」がつきました。なぜ中国と韓国と日本では箸の長さが違うのかと言えば、料理における個人領域と共有領域のとらえ方が違うためです。

個人領域と共有領域という考え方自体、あんまり馴染みがないかもしれないですが、これは私の得意分野で、10年ほど前にデータをとってます。箸に限らず、人はどこまで他者と共有が可能かというテーマです。

たとえば耳かきやバスタオルを共有できるのか否か、できるとしたら誰とできるのかといった話。ものによっては世代差があり、ものによっては地域差があり、ものによっては家庭差があり、ものによっては個人で決定している。

DSCN1251箸についてはそんなに難しい話ではなく、菜箸や取り箸がなぜ長いのかを考えれば、文化によってなぜ箸の長さが違ってくるのかが理解できようかと思います(写真の上が菜箸、下が普通の箸)。違うものもありますが、この場合は形状がほぼ同じ。ただ長さが違う。

共有領域である鍋や皿に直接箸を入れていい文化においては箸は長い方がいい。韓国がそうです。中国は大皿から自分の箸で取り分けていい。また、他の人の皿に自分の箸で取り分けてもいい。むしろ、そうするのが礼儀。

その点、最初から個人の皿に取り分けられているか、大皿や鍋から取り皿に移動させるのが日本。その際、直接鍋や大皿に個人の箸を入れないため、届く距離が短くていい。しかし、取り分けるための箸は届く距離が長い方がいい。

他にも決定した要素はありましょうけど、おおむねこれで説明がつくと思います。

この辺については長い長い論考があるので、そのうち「ビバノン」で循環させますか。

※あくまでそれぞれの国の箸の長さは標準値であり、日本で売られている韓国箸、また、日本の韓国料理屋で使われている韓国箸は、日本の箸と同じくらいの長さのものが多く、これは日本向けだと金相佑君が言ってました。うちにある韓国箸も日本の箸と同じくらいの長さです。本国でどうなのかは確かめ忘れました。

 

それでも箸は魅力がある

 

vivanon_sentence私は箸が好きでして、ついつい買ってしまって、使ってないのが軽く30膳はあります(写真参照)。

それほど消耗するものでもなく、1DSCN1238年やそこらは使えますので、すでに一生分あります。アホかもしれない。

つい買ってしまうのは、箸は安いからです。100円ショップでもいいものが出ていることがあります。

しかし、天然漆のものや銀製の金属箸だと数千円から万単位します。

佃島にある箸屋さんには八角箸が売られていますが、一番安いのでも二千円から三千円、高いものは万です。

見ると楽しいですが、そんな高額なものに手は出さず、私が買うのは安いものばかり。一膳千円以上のものなんて買ったことがないと思います。

それでも丸・四角・六画、細いもの・太いもの、長いもの・短いもの、軽いもの・重いもの、溝のあるもの・ないものなどさまざまあるため、ついつい手が出てしまいます。素材もさまざまありますしね。

いろんな箸を使ってきた結論を言えば、割り箸でなんら問題なし。身も蓋もないですが、割り箸でも魚を食うのに困ることはなく、米粒をつまむのに困ることもありません。カニを食べるのにはちょっと不便ですけど、豆をつまむんだったら、先の尖ったものより、表面積が大きく、ざらつきも大きい割り箸の方が適しているかもしれない。

背中を掻くにもエッジが鋭い割り箸が最適です。

とは言え、上品な箸で飯を食うと味も上品になるような気がしますし、おいしくなるような気もします。中華料理は中華箸で食べた方が本格的。その程度には箸を使い分けております。

いろんな料理を食べるようになった時代にはこうするのが適切かと思います。時代に即した箸の使い方です。

 

謎の韓国箸

 

vivanon_sentence私の好みは重めの箸です。その点で、金属箸も好きで、韓国の箸も二種用意してあります。

しかし、意味がわからんのが韓国の平べったい箸です。使ってはいるのですが、いまだ正しくは何にどう使うのかがわからない。あれは握りにくい。なのに今も使われているってことは何か意図があるはず。

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当初は麺用かとも思ってました。ふたつの平面で麺を挟むと滑りにくいのではないか。

ところが、実際に使ってみると、平面が手に密着するので、平べったい二つの面できれいにブツを挟むようにはなっていない。持ち方次第、挟み方次第でそうすることもできるのですが、手元が安定しないし、飯を食うのにそんな面倒なことに頭を使いたくはない。

もし平面で挟むためであるなら、先だけ平べったくした方がより確実に目的に合致します。

ソウルで飯を食べた時に、箸入れには二種の箸が入れられていて、片方がこの箸でした。「やはり用途によって使い分けるのか」とも思ったのですが、今に至るまで、あの平べったい箸の用途がわかりません。

ネットで検索すると、もともと朝鮮半島では、スプーン(スッカラ)を多用し、箸は菜箸にしか使わなかったと書かれているものもあるのですが、菜箸だからといって平べったくする意味がわかりません。

原材料を節約するためと、金属だと重くなるので軽量化のためでありましょうか。とくに菜箸だと長いので、軽くする意味がありそうですけど、今なおその形状を残す意味があるかなあ。

あるいは肉に刺した時に肉が動きにくいかもしれないですが、そんな使い方をしている人を見たことがない。

次に韓国に行く時は、箸のメーカーを訪れて、その意図を聞いてきたいと思います。

 

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