松沢呉一のビバノン・ライフ

富田安紀子を例に写真の著作権を確認する 1-ゆるゆる著作権講座 10-(松沢呉一) -3,383文字-

 

富田安紀子の無断転載

 

vivanon_sentence事実経過は以下のTogetterを参照のこと。

 

山本夜羽音氏、日之丸街宣女子富田安紀子氏の画像無断転載に物申す

日之丸街宣女子の著者富田安紀子氏、ヘイト法案反対チラシの画像引用に対する苦情について言及

 

富田安紀子はロクでもないレイシストであるとの前提を抜きにしても、とうていこの人のやっていることは擁護できません。

ただひたすら非を認めて謝罪をするしかないケースです。それができなかったために富田安紀子は自分の首を締めてます。もっともダメな対応のモデルケースを提示したと言えましょう。

そもそも富田安紀子のやったことは、それ自体を見れば、ネットからネットへの画像の転載です。ネットには著作権侵害が溢れています。たとえばTwitterのアイコンには無断複製が多数あります。Facebookにもちょっとはあります。そもそもそういう人を信用しないので、私のTLには少ないですが。

ネット上では一般にゆるく著作権に対処していますし、ゆるくてもいい部分があると私は思ってます。ゆるゆる派ですから。

しかし、これには最低限の条件があって、リンクという方法によって元ネタを明示して、そこにすぐアクセスできることが必須かと思います。そうすることによって誰の著作物であるのかを確認ができ、元ネタを不当には侵害せず、アクセスを促す。つまり、人格権も財産権も尊重する限りにおいては容認されていい(これは他人の著作物を批判的に取り上げてはいけないということではないので誤解なきよう)。

それでも法に抵触している場合、文句を言われたら謝罪するしかないわけですけど。

 

 

法とネットのルールとのズレ

 

vivanon_sentenceインターネットの場合は、どうしたって国内法だけではなく、他国の流儀が入り込んできてしまいますし、インターネット上で合理的な方法が規約や機能によって実現されてもいますが、いちいち「これは国内法では違反だが、国によっては合法」「これは他国でも違法だが、規約でクリアしている」と認識できる人は稀でしょう。角川インターネット講座 (3) デジタル時代の知識創造 変容する著作権

結果、他国で通用しているルールやネット特有のルールが広く流通しやすく、法律とは別の要件によるルールが成立しつつある過程にあるのだと思います。

しかし、インターネット上では著作権を無視していいというわけではありません。富田安紀子自身のやったこと自体はネットからネットへの無断転載ではあれども、ネット上のルールさえも満たしておらず、当然、著作権法も満たしていません。

さらにはチラシとして利用することを前提としている分、悪質であり、看過できないのは当然かと思います。

 

 

著作権をまったく理解できていない漫画家

 

vivanon_sentence謝罪するしかないことをわかっているらしきツイートをしているにもかかわらず、富田安紀子はおかしな弁明をしてしまって、著作権に無知であることを晒し、その上、山本夜羽音をブロックして解決を遠ざけています。

 

そもそもの「原因」は私のヘイト法案反対チラシの中に使われている、小さい写真でした。
WEBで拾ったものでした。小さくしか使わないので、「引用」だなと使ったのがミスでした。

 

このツイートでは自分のミスだと認め、当該の写真を外しておきながら、なおURLを出しただけで無断転載を続けています。この場合は文句を言わないであろう相手ではありましょうが、著作権のことをなんにもわかっていないみたい。お前はわたなべりんたろうか。

著作権については本を買ってくるまでもなく、ネットで検索すればだいたいのことはわかるわけですよ。ただ、以前から指摘しているように、条文だけを読むと、自分に都合のいい解釈をしてしまいがち。自分勝手な人間ほど、これをやります。

富田安紀子のこのツイートが典型。

 

著作権法32条の「引用」は、全体に占める割合が凄く小さい「画像」やら「文章」を著作権者の許諾無しに使えると言う条項です。それに当たるな、と使用しました。

 

著作権法の三十二条はこれ。

 

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

 

どこにも小さければいいなんて書かれてませんね。彼女は引用する側とされる側の主従関係を見る場合の基準を誤解したものだと思われます。これについては著作権裁判としてよく知られる藤田嗣治裁判を参照のこと。

 

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