松沢呉一のビバノン・ライフ

社会活動とデザイン-ACT UP 4(松沢呉一)-2,684文字-

あの時代と今が重なる-ACT UP 3」の続きです。

 

 

 

デザインに凝る事情

 

vivanon_sentence「ACT UP&TALK OUT」の告知が遅れたのは、告知のためのページ作成に手間取っていたからです。tumbrを参照のこと。

時間がないし、予算もないので、フライヤーは作らないことにしたのですが、「それでもフライヤーにできるデザインは作ろう」ということになってデザイナーの潟見陽さんに面倒な依頼をしてしまいました。

「金相佑君送別会」の時の「当日のみのポスターとフライヤー」に続いて、今回は配布されないフライヤーです。高校生デモの際に簡易版のフライヤーをちょっとだけ配りましたし、当日も1ページ目のみプリントアウトするかもしれませんが、完成版のフライヤーは存在せず。

フライヤーが欲しい人は各自でプリントアウトしてください。1枚目と2枚目でフライヤーにしてもよし、3枚目と4枚目を加えて折り込み4ページにしてもによし。

潟見さんも凝ってしまいまして、微妙に違ういくつかのヴァージョンがあり、現在タンブラーに出ているのが最終版です。

 

 

ACT UPの精神とデザイン

 

vivanon_sentenceACT UPについては映画を観るまで詳しくは知らないでいたのですが、このポスターはよく知ってます。

 

 

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このポスターは美術館にも保存されています。デザインのインパクト、文字のインパクト、これぞポスターって感じ。

以下は今回のデザイン。

 

 

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ACT UPの精神が我々にも引き継がれていることを表現してみました。

デザインが完成するまで告知は控えようと主張したのはDJ TASAKA。フロートもパーティも印刷物も、大きくくくればデザインであり、BLEND is beautifulとしてはそこはおざなりにはできない。今回来られない人が「次は観よう」と思うためにも、デザインは重要です。

どう自分らの主張を伝えていくか。これはまさしくACT UPが奮闘したことです。

 

 

2011年以前のデザイン

 

vivanon_sentence2011年以前にも、デザインに気を配る人はいたでしょうけど、多くは「自分と同類の人たちだけがわかればいい」というものでした。

無知なネトウヨがゲバ文字の看板を見て、「中国の簡体字を使っている。中国共産党が背後にいる」などとよく騒いでいるわけですが、騒ぐ方もどうかしていると同時に、今時、ゲバ文字を使うのもどうなんか。かつて学生運動をやっていた人たちだけに通じればいいのでしょうけど、これでは学生運動コミュ、市民運動コミュ内で終わります。自己満足。

結局、市民運動の中でも、かつて「広告批評」が掲載したプロの手による反戦、反原発のポスターがプラカードとして今も使われていたりします。「まず、総理から前線へ」もそのひとつ。これについては「広告批評」の故・天野祐吉のブログを参照のこと。

 

 

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人によっては、それが糸井重里と浅葉克己によるものであり、「広告批評」に掲載されたものだと知らずに使用していることもありそうです。

手書きのチープなものの方が思いが伝わることはありますが、「プロが手がけるとこうなる」ということをまざまざと見せられたこの号や反原発のポスターが掲載された号は今もうちのどこかにあるはずです。

 

 

2011年以降のデザイン

 

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しかし、2011年以降、確実にデザインは変わってきています。当然と言えば当然で、「表現に何ができるか」なんてことを考えている間に日が暮れる人たちとは違い、すぐに動いて路上でプロテストを始めた人たちの中に、プロのイラストレーター、漫画家、デザイナーが多数いたわけです。それぞれの得意分野で力を出せば必然的にクォリティは上がる。

 

 

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