松沢呉一のビバノン・ライフ

前提をとり違えた批判は無効-バター犬と性差別 1-(松沢呉一) -2,982文字-

 

「怒りを力に」の大阪上映会決定

 

vivanon_sentenceまずはお知らせです。

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「ビバノンライフ」で繰り返し取り上げてきた映画「怒りを力に―ACT UPの歴史(UNITED IN ANGER ―A HISTORY OF ACT-UP)」の上映が決まりました。10月24日(土)、大阪ロフトプラスワンWESTの昼の部です。昼の12時半スタートですので、くれぐれもお間違えのないように。

「凡どどラジオ」の凡ちゃんが仕事でしばらく関東にいるため、それぞれ個人活動を始めていて、この上映会はどぅーどぅる君の単独企画です。大橋巨泉なみの鮮やかな司会が期待されます。

この映画はすでにDVDも出ているのですが、解説つきで観ると一段と理解が深まります。この日のゲストであるBUBU、山田創平ともHIVとの関わりは古く、かつ深く、大阪のHIV啓発活動の拠点distaにも関わっていたので、HIVについての深い深い話を聞けましょう。

この映画を観ると、顔を晒して路上に出ることの意義がよーくわかりますし、そういう人びとこそが社会を変えてきたことも実感できます。これは同性愛者だけの問題ではありません。怒りをもって路上へ。

 

 

「バター犬」を批判した人びとの勘違い

 

vivanon_sentence一方の凡ちゃんは日曜日に高円寺パンディット「凡ソロラジオ」一回目の公開放送を実施。

この日は朝6時台から銭湯に行き、多摩川でヘビ探しをしようとして道に迷い、全日本憂国者連合会議による安倍総理私邸への抗議を観に行き、午後からSEALDsと学者の会による新DSCN2535宿ホコ天での街宣を観に行き、夜の「凡ソロラジオ」では、始まって間もなく床で爆睡してしまいました。私がオーガナイズしたイベントだったんですけどね。

終わったあとの打ち上げで、「バター犬騒動」について何人かに聞いたんですけど、「そもそもあの言葉は上野千鶴子と古市憲寿の関係を揶揄したものではない」、つまり、「バター犬批判は的外れ」というところまでは理解されつつあっても、その先については理解がなされていないようです。

「その先」というのは「もしこれが具体的な個人と個人の関係を示したものだとしたら、バター犬は性差別表現なのか否か」ということです。

結論を先に言っておくと、これは性差別表現ではないと私は判断しています。どこがどうして性差別なのか、誰一人納得できる説明をしている人がいません。

しかし、それとは別の理由で好ましくない発言だったと思っています。好ましくないだけで、さまで批判されるようなものでもないとも思っていますが、そもそも「何が問題か」が見極められていない以上、「問題か否か」も見極められるはずがない。

言葉の意味も定義も明確にできていないのに「セクシズム」「セクハラ」「ルッキズム」といった言葉を他者の攻撃に使う人たちが多すぎです。

※写真はホコ天の様子。以下同

 

 

だから法規制は危険

 

vivanon_sentenceこういうことをしていても、議論は深まらないし、ロクに意味もわからず言葉を振り回して他人を貶める欲求に駆られているだけなのがバレるので、やめた方がいいと思います。もう騒ぎは収まったので、ほっとけばいいという人たちもいましょうけど、今後のために確認をしておく必要がありましょうし、これは「オカマ論争」以来のテーマでもありますから、記録として残しておきたい。

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ある言葉を「差別表現」であると批判する際には慎重な判断が必要であり、文章もロクに読まずに軽卒な難癖をやる人たちがいるから、法規制にも警戒せざるを得ないのです。

法で規制すると、いよいよそれを背景にして、「差別だ」「違法だ」「犯罪だ」と無闇に他者を攻撃する人たちが出てくるのだし、こういう人たちのせいで本来問題とすべき表現がどういうものであるのかが見えなくなります。

現実に、文章をまともに読めずに「セクシズム」だの「セクハラ」だのとして他者の表現を否定することがまかり通ってしまうのがこの国です。法規制に賛成する方々は、まずこういう人びとを諌め、「あなた方が自由自在に他者を攻撃できるための法規制なのではない」ということをわからせる必要があろうかと思います。

ということを見極めるためにも格好の素材ですので、以下、丁寧に見ていくことにします。

 

 

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