老人がキレる理由はこれだ!-老害シリーズ・犯罪編 2(松沢呉一) -2,566文字-
「なぜ老人はキレるのか-老害シリーズ・犯罪編 1」の続きです。
原因を検討する
高年齢の犯罪、とりわけ暴行の伸びがあまりに急激なので、おそらくそんなことはないだろうと思いつつ、「ある世代が特別な性質を帯びていて、その世代が老人層になってきたために、犯罪が増えている」という可能性についても検討してみました。
ある世代が他の世代と違う特性を帯びている傾向は事実あるでしょう。となると、たとえば戦争、たとえば敗戦、たとえば高度成長といった時代を生きてきた人たちは、「少年期に戦争で飢餓感を溜め込み、青年期に敗戦で屈辱を味わい、社会に出て高度成長によって豊かさを満喫し、この国をしょっているとの自負もありながら、引退して目標を失って子どもの頃に蓄えた飢餓感に再度襲われて、そのやり場がなく、ついついイライラして手や足が出る」といった仮説であり、過去にそういうことを私も書いたことがあります。
同様のことを述べている人がいます。土井隆義・筑波大教授のコメント。
「現代の高齢者は高度経済成長を経験した世代だ。社会が前進していた時代で、彼らは欲望をあおられていた。年をとってもその頃の感覚をひきずっており、いまも社会に出ていこうとする。その半面、高齢者の活動の場は開拓されておらず、居場所はない。社会に対する期待値が高いままだから現実とのギャップが広がっていき、日頃の生活で鬱々とした不満を抱えている。そうしたなか、小さなことで爆発してしまう高齢者が多い」
しかし、これについてはとっくに調査がなされていて、この説は否定されています。
2013年に発表された警察庁・警察政策研究センター及び 慶應義塾大学・太田達也教授による共同研究「高齢犯罪者の特性と犯罪要因に関する調査」の13ページにこうあります。
近年の高齢犯罪者の増加は,犯罪者率の高い特定の世代グループが高齢期に達したためでなく,平成6年以降(特に,平成10年以降)の何らかの外的要因であることが確認できる。
その根拠となる数字も挙げられていますので、リンク先を参照してください。
※わかりにくい写真ですが、これは某所で事件を起こして警察に連行されるおっさん。昨日のことです。60代半ばだと思います。暴行の現場までは見てませんが、被害者は腕に怪我をしてました。つまりは傷害事件ですが、たぶん被害届は出さなかったと思います。
原因は社会的要因
「高齢犯罪者の特性と犯罪要因に関する調査」は、とくに平成10年から高年齢の犯罪者率が急増してきたのを受けて、平成18年までの数字をまとめたもの。すでに数字が古くなってますが、事情は今も変わらないでしょう。
ここに出ている数字を見ると、全世代的に変化は連動していて、すでに高年齢層に達していた人たちの中でも犯罪者率は増加していますから、ある年代のみが高年齢層の犯罪を増加させているわけではありません。
よって、よく言われるように、「最近の老人は昔と違って体力も気力もあり余っている」といった理由でもない。それが前提としてあるにせよ、このところの急増は、高年齢層の個的、内的理由では説明ができないのです。
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