松沢呉一のビバノン・ライフ

大阪市ヘイトスピーチ抑止条例可決-「おっぱい募金」とパターナリズム – (松沢呉一) -2,323文字-

 

ヘイトスピーチの定義が公的になされたことの意義

 

vivanon_sentence

スクリーンショット(2016-01-16 10.28.02)繰り返し取り上げてきた大阪市の「ヘイトスピーチ抑止条例」が傍聴席からの妨害がありつつも成立しました。

私が消極的賛成だったのは「広くメディアに及ぶ点」であり、そうなるとどうしても判断の難しいケースが含まれてきます。風刺か否か、冗談か否か、創作上の前提に過ぎないのか否か。

初の試みでありますから、どう運用されるのかを確認してから範囲を広げていけばよくて、とりあえずは路上に限定した方がいいと思っていたのですが、それでも慎重な定義であり、その上、手続きにも慎重さがあり、刑事罰が課せられるわけではなく、名前を公開されるだけですから、この条例に賛成という考えです。

小さい声で「よかった、よかった」と言っておきます。

 

 

ヘイトスピーチ抑止条例 全国初の成立 大阪市議会

2016年1月16日 00時31分(最終更新 1月16日 01時14分)

ヘイトスピーチの抑止策をまとめた全国初の条例が15日、大阪市議会で成立した。ヘイトスピーチの定義を国内法令で初めて具体的に明記。有識者でつくる審査会を設け、ヘイトスピーチに当たると認定したものは活動団体や個人名を公表する。今夏にも施行される見通しだ。

毎日新聞」より

 

 

これでヘイトスピーチの定義がやっと公的になされ、「“差別者は死ね”もヘイトスピーチだ」などと、定義もわからないまま、適当なことを言う人たちが減ることが期待できます。最近では、「『おっぱい募金』はヘイトスピーチ」などと呆れたことを言う人もいましたが、この定義を見ればあり得ないことが理解できましょう。

認定するには相当の手間がかかり、当然予算も必要でしょうから、小さな自治体がすぐに実現することは難しいにせよ、今後各自治体も同様の条例を制定する可能性があり、この定義を参照にすることが期待できます。最初の条例がこれでよかったですよ。その点においては積極賛成です。

 

 

「おっぱい募金」批判の根底にあるもの

 

vivanon_sentence「おっぱい募金」を批判する人たちは気味が悪い。確認すべきことも確認していないことが気味が悪い。本人たちが自分の意思で出ていることは明らかなのに、その意思を頭ごなしに否定することが気味が悪い。法律の条文も確認せずに、違法であるかのようなことを言い募り、刑事告発をほのめかして脅すことも気味が悪い。

「結論ありき」の人々であり、その結論に合致する理由をあとづけでゴミ箱から拾ってきているだけです。そのためにはヘイトスピーチ認定までをする。

法に拡大解釈できる余地があれば、この人たちは確実に飛びつく。法の拡大をしたがるのは国家権力だけではないと以前から言ってきた通り。抑制が効かない分、むしろそちらの方が怖いとも私は指摘してきましたが、その意味が今回よく見えたのではないかと思います。

米国において性表現や性行動の規制を目論むタイプのフェミニストたちは時にキリスト教原理主義とも結託をするように、その「結論ありき」の根底にあるのは道徳です。家父長制に基づく二重規範の道徳から逃れられておらず、その部分でキリスト教原理主義とつながってしまいます。

日本でも同じです。フェミニズムに依拠しているはずの人たちが、日本キリスト教婦人矯風会とも結託をする。根幹にあるのは同じ道徳ですからさして不思議はなくて、この道徳はセックスフォビアをしばしば内包しています。

 

 

next_vivanon

(残り 999文字/全文: 2445文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック