松沢呉一のビバノン・ライフ

国を超えてつながる-台北報告 雑談編 10(松沢呉一) -2,298文字-

ゲイのセックスワーク事情-台北報告 雑談編 9」の続きです。

 

 

 

日本の場合

 

vivanon_sentence必ずしもきれいに重なるわけではないですが、前回書いた「セックスワーカー・アイデンティティ獲得の難しさ」「当事者が意思表示することの難しさ」は、各国に共通するテーマです。

日本では、ゲイのセックスワーカーだけじゃなく、ヘテロ女子にも共通します。事情が少し違うのは、プロの技術と意識が要求されて、能力があれば長期間でき、そこそこは収入になるAV男優でしょうか。そういう意識と能力のある男優に限りますけど。

風俗嬢意識調査―126人の職業意識ヘルスやピンサロでは、アルバイトかつ短期が多いので、労働者意識が生まれにくい。実際には十年以上働くのもザラにいるわけですが、結果そうなるだけのことで、毎年正月になると、「よし、今年こそは辞めるぞ」と誓っていたりします。夏くらいになると、「よし、来年こそは辞めるぞ」になっている。

「できるだけ早く辞めなければならない仕事」「更生しなければならない仕事」と社会的に脅迫され、その視線を内面化していますから、それと抗うことは難しいのです。

こういったヘルス嬢の現状と意識については今回一緒に台北のワークショップに参加したSWASHの要友紀子代表の著書『風俗嬢意識調査報告』(ポット出版)を参照のこと。

 

 

セックスワークの業種と特性

 

vivanon_sentence業種によっても違いがあって、最初から十年やる覚悟で始めて、「できることなら一生続けたい」と思い続ける性風俗業種は女王様くらいじゃないでしょうか。しかも、この仕事に就く人たちは堂々と意思表示をします。

DSCN5830しかし、この業界は今は稼げないので、やっぱり趣味が入っている人たちが多くなってしまいます。ギャラが安くても、男を鞭打ち、支配する快楽を得られるにはこの仕事をするしかないというところで満足しがちです。

かつてはよくいた「なんちゃって女王様」は減り、「本物」ということで、ある意味では客にとっていい時代ですけど、昼は他の仕事をやっている人たちも多く、これだけを職業とするのは難しい時代であり、やっぱり趣味の入ったバイトになりがちです。

台北でも、若い世代の女子はアルバイト意識が強く、状況は同じらしいのですが、その点、公娼制度廃止反対闘争をやったおねえさん方や、今も萬華の街角に立つおねえさん方は肝が座ってます。闘っている様がカッコいいんですよ。同志って感じがします。

 

 

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