松沢呉一のビバノン・ライフ

事実より願望を優先する小林大治郎と村瀬明-歴史を改竄した『みんなは知らない国家売春命令』 2-[ビバノン循環湯 115] (松沢呉一) -3,365文字-

元ネタは『百億円の売春市場』-歴史を改竄した『みんなは知らない国家売春命令』 1」の続きです。

 

 

「すべては日本政府が悪い」としたい

 

vivanon_sentenceみんなは知らない国家売春命令』では、対日賠償使節団として来たポーレー使節団を接待した時のことを『百億円の売春市場』のタイトルを出して紹介しているのだが(つまり、元ネタを明記しているたったの二箇所のうちの一箇所である)、小林大治郎・村瀬明はここでも改竄している。

以下は『みんなは知らない国家売春命令』より。

 

 

ポーレー使節団たちは、もちろん、お忍びだった。一行は五人だけだから、一人について三人の美女が侍ったことになる。当のポーレーは、外務省筋の内意で、あらかじめ接待の内容を知っていたから、宮沢理事長ら協会幹部のいんぎんなあいさつを聞いただけでサッサと姿を消した。あとの四人はそれから選抜された美女の濃厚なサービスを満喫したのであった。

 

 

日本の外務省とRAAの幹部たちは使節団に女をつけて喜ばせようと下品な気の遣い方をしたのに、さすがにアメリカ人は品がある。話だけ聞いて日本側の顔を立て、接待を受けずに帰り、下っ端だけがご相伴に預かったのだな、という話である。

ところが、原文はまったく違う。

 

 

ポーレーさんは、日本官辺の随行をきらって、日本人運転手が案内しただけだったので、ポーレー一行のこの「社会科研究」が上品以上のものを期待していたのが想像される。外務省筋の内意で、ほぼ要領を察していたので、宮沢理事長以下数名の協会幹部は、いんぎんにあいさつすると、さっさと姿を消して、あとは芸能係社員を除くとオール女性のサービスだった。

 

 

つまり、RAAの理事達は、ポーレーたちの真意を知っていたがために、ポーレーたちがお楽しみできるよう、さっさとあいさつを済ませて席を立ったのであり、ポーレー自身は席を立っていない。日本側の気遣いがうまくいったという話でしかなく、ポーレー一行は「上々機嫌で帰還された」のである。

ここは単なる誤読かもしれないが、では、どうしてこういう誤読をしたのか。小林大治郎・村瀬明は、「民主主義国家アメリカの末端の兵隊はひどいが、国としては素晴らしい。対して日本は三流国家であり、だからRAAなんてものを作り、なおかつ赤線を容認したのだ」ということをなんとしても言いたく、その願望が誤読を招いた。

しかし、この本のあまりのひどさからすると、ここも意図的に改竄したに違いない。願望を優先して歴史を改竄できる著者たちなのだ。パクるのだとしても、事実関係は正確に残すべきであり、このように、自分らの主張に沿って恣意的に改竄してはならない。こんな当たり前のことを書かなければならないのが悲しい。

※今回の写真もすべて福生で撮ったものであり、本文と直接の関係はありません。

 

 

告白文の五本中四本までがパクリ

 

 

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