松沢呉一のビバノン・ライフ

闇の女たちは消えた-「闇の女たち」解説編 5(松沢呉一)-2,527文字-

書店からの報告-『闇の女たち』解説編 4」の続きです。

 

 

 

崩壊する街娼グループ

 

vivanon_sentence闇の女たち』を出すに際して、インタビューをした街娼や客引きに挨拶をしておこうと思い、また、今も立っている人たちを探して「ビバノンライフ」用にインタビューをするかとも思い、渋谷、新宿、池袋、新大久保、上野、鶯谷、浅草、立川、錦糸町、横浜などに行ったのですが、『闇の女たち』の登場人物には一人も会えませんでした。

闇の女たち』に登場する、ある人物が消えた時の状況を知っている人は見つかったのですが、その後の話は曖昧な伝聞のみで、今現在どこで何をしているのかは、結局わかりませんでした。

客引きは今もあちこちにいますが、日本人の街娼はもはや風前の灯です。

辛うじて上野や浅草には今も日本人街娼がいて、上野で立ち話をしてきました。時々フラリとやってきては客を探す、いわゆる「流し」であり、旧来の人たちとは断絶しています。

この彼女は二十代と思われ、世代が若いこともあって、立ち話の感触でも面白い話は聞けそうになく、インタビューは申込みませんでした。『闇の女たち』にも二十代は出てきますが、内容がどうしても薄くなり、謝礼まで出して話を聞く気にはならない。

 

 

『闇の女たち』のきっかけになった男娼も消えた

 

vivanon_sentence確定はしていないのですが、以前交流のあった上野の男娼グループはどうやら消滅したようです。その二十代街娼も彼らをまったく知らないと言ってましたし、もし今も継続しているのであれば、若い流しが夜の上野に立てるはずがないのです。

このグループは、世代が入れ替わっても、焼け跡の時代から継承されていたのですけど、それが消滅したかもしれない。

私が街娼の取材を続けるきっかけになったのがこのグループの二名です。『闇の女たち』にもその様子が収録されていますが、話が抜群に面白かったのです。その面白さはキャラに負うところも大きいのですが、同時に、焼け跡時代からの言葉やしきたりが今も残っていることが私の関心を惹きました。

今聞いておかないとそろそろ消えると焦って取材を積極的に始めたわけです。この二人のうちの一人は、それから間もなく引退したことは聞いてましたが、このグループ自体はまだ残っているだろうと思っていただけにショックでした。

 

 

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