松沢呉一のビバノン・ライフ

怖い体験-広島マントル嬢インタビュー 2-[ビバノン循環湯 121] (松沢呉一) -4,293文字-

結婚しない生活のために-広島マントル嬢インタビュー 1」の続きです。

 

 

ホテルは怖い

 

vivanon_sentence—二六歳で実家に戻って、それからはずっとマントルで。

「そう。だから、デートクラブとマントルしか知らん。一回だけ、サロンでも働いたこともあるけどね。手伝ってくれって頼まれて、短期間働いたけど、あっちは大変。こっちの方が楽。あと、あっちは、出勤がうるさいじゃろ」

ヘルスにせよ、ピンサロにせよ、部屋数、ボックス数が決まっているため、ローテーションに組み込まれると、なかなか休めない。その点、デートクラブやマントルは融通が利く。とくにマントルは気分で出勤し、気分で帰れる。

—デートクラブからマントルに移動したのはなぜ?

「気分的にホテルはあんまり好きじゃない。ホテルは入れるホテルと入れないホテルがあって、フロントで止められるのがイヤ。だいたいどこがそうなのかわかってくるから、フロントが見て見ぬフリをしてくれることがはっきりしているホテルだったらいいんじゃけどね。それと、ホテルは怖いこともある」

—ここだと怖いことはないの?

「まず聞かない。デートの子らは、その日にもらったお金をずっと持っていたりするから、それを狙うのがおるけんね。ここだと、おばちゃんが金を受け取って、うちらはおばちゃんからもらうから、お金をもってない」

—そっか、終わったら、うちにいったん帰るしね。

「そうそう。ここに来る時はお金は持ってこんから、盗られるもんがない」

 

 

客に襲われた時の話

 

vivanon_sentence—デークラでは、やられたことがあるの?

「やられたことはない。やられそうになったことはある。終わって、あとは帰るだけじゃけん、“タクシーが来ましたよ”ってフロントから電話が入るまで、ベッドのところに座っていた。そしたら、風呂場でカチャカチャ音がする。“なんやろね。男性用の化粧品でもつけとるんじゃろうか”としか思わんかって、こっちは疲れていて振り向く気にもならんでボーッとしてたら、いきなり、後ろから口をガーッと押えられた。タオルに何か薬混ぜてたのね。これを吸っちゃいけんと思いながら、振り返ってもみ合いになって気がついたら、私の方が馬乗りになっていた。うちもそういう時はけっとこう強いけん。ウフフフ」

—笑っている場合ではないような。それで、それで。

「ほんで、馬乗りになって、お客さんが下になっていて、それでも離さんのよね、私の手を。髪の毛持って、床にガンガンガンガンぶつけたたの。ほしたら、向こうも痛いき、手を離したわね。ほやけ、“すいません”て言うから“やかましい”って、“タクシー来ました“という電話が鳴ったから、さっさと“帰るぞ”って、ほっといて帰ったんよ」

—警察は?

「呼べるわけないじゃろ」

これでデートクラブが摘発されることは通常ないのだが、彼女は事情聴取され、被害届を出さにければならないため、多くの場合は警察を呼ばない。それを知っていてやるのがいるのだから、二重に悪質だ。売防法が犯罪を作り出しているのだ。そこに暴力団が入り込む余地が生まれるのだから、売防法は暴力団をサポートしているわけだ。

 

 

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