松沢呉一のビバノン・ライフ

社会的法益と個人的法益-ヘイトスピーチと法 2- (松沢呉一) -3,940文字-

山田太郎議員を支持する-ヘイトスピーチと法」の続きです。

 

 

 

法益を理解する意義

 

vivanon_sentence前回予告したように、社会的法益と個人的法益の違いを説明しておきます。

法の基本とも言うべきことなのですが、案外理解されておらず、山田太郎議員が「社会的法益と個人的法益を分けるべき」と主張していることも正確には理解できていない人が少なからずいそうです。

弁護士がこの両者を混在させたり、見るべきところを無視して論を進め、表現の自由をないがしろにしている、つまりは憲法をないがしろにしていることは許されていいことではない。

これをすぐさま批判できるよう、社会的法益個人的法益の違いをもっと多くの人が理解しておくべきです。事実、すぐさま批判していた知人はここを理解していたからこそ批判できたわけです。

ヘイトスピーチ規制法についての議論が始まってからずっとこのことは言い続けてきたし、それ以前から、売防法、風営法、公然わいせつなどを通して説明をしてきたのですが、私は同じことを繰り返すのがホントに嫌いなので、「ビバノンライフ」ではちゃんと説明してなかったようです。

このあとの展開においても、ここを理解しておくとわかりやすくなるので、以前、Facebookに書いたものに手を加えて、ここに出しておきます。

 

 

その法が何を守るのか

 

vivanon_sentenceざっくり言えばその法律が守るべきものとして設定されているのが法益で、これまたざっくり言えば法益には個人的法益社会的法益国家的法益があります。

国家的法益はここでは省略するとして、個人的法益の法律が守るのは個人の生命、身体、財産、生活、信用といったものです。社会的法益の法律が守るのは公共の秩序、公序良俗といったものです。

社会的法益の法律には刑法174条の「公然わいせつ」、刑法175条の「わいせつ物頒布等」、刑法185条の「賭博罪」、売防法風営法大麻取締法など などがあります。他にもいっぱいありますが、私が興味あるのはこの辺。

道交法の謎―7500万ドライバーの心得帳 (講談社プラスアルファ新書)

これらは一般によく言われる「被害者なき犯罪」です。個人的法益の法律、個人的法益社会的法益のどちらにもまたがる法律では被害者がいますけど、ここに挙げた法では被害者はいません。博打に負ける人を救済するために賭博が禁止されているわけではないのです。

わかりやすい例としてよく出される社会的法益の法律は、道交法のスピード違反です。対向車両がおらず、通行人もおらず、見通しのいい原野の道路でスピード違反をしたところで誰にも迷惑をかけてませんね。

しかし、スピード違反を取り締まるのは被害者を守り、救済するためではなく、交通秩序というものを守るためですから、「誰にも迷惑かけてないだろ」と言っても無駄。どこかの誰かに被害を生じさせるからいけないのではなく、それ自体が、交通上の秩序を乱す行為として取り締まられているわけです。

 

 

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