松沢呉一のビバノン・ライフ

泉佐野市の失敗とふるさと納税-ペットと公共心 2-(松沢呉一) -2,686文字-

殺処分ゼロのための予算はどこから?-ペットと公共心 1」の続きです。

 

 

 

なぜ泉佐野市は失敗したのか

 

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この日本でもペット税を導入しようとした自治体があります。大阪府の泉佐野市です。目的は糞害対策が主だったのですけど、これに私は大いに期待していました。これがうまく行けば殺処分ゼロも可能になります。

しかし、あえなく頓挫。その事情はこちらをご覧ください。簡単にまとめると、犬を飼っている人を完全に把握することは難しく、多数の漏れが出るため、平等に課すべき税金に不公平が生じるということです。

犬の把握は狂犬病の登録によって可能であり、そこに税金をかければいいわけですが、多数の飼い主がこの登録をやっていない。狂犬病の登録時に税金を徴収すれば手間が省けるのに対して、一頭一頭家庭訪問をして徴収するとなると、その人件費が増大します。また、それによって確実に捕捉できるとは限らない。

DSCN4214税金一般に言えることですが、どうやっても完璧な把握は無理な話です。完璧に把握をしようとすると、そこにコストがかかって、かえって出費が膨らむため、税金逃れをする率が数%であれば無視をしていい。しかし、これが何割という単位になると不公平感が高まりますし、払っていない人たちの分を払う人たちが負担をすることになって税金が高くなる。

泉佐野市の例では、半数以上が税金を払わないことになりそう。だからといって、刑事罰を加えることもできず、そもそも狂犬病の登録をしない人たちが自主的な申告をし、役所にペット税を払うに来るとも思えません。

また、これによって猫の殺処分をゼロにすると、「猫を飼ってないのに、どうして犬を飼っている人たちが負担をするのか」と文句を言う人も出てきてしまう。ネコは飼っているのかいないのかわからない状態の個体数が多すぎて、犬以上に漏れが出てしまいます。

 

 

無責任な飼い主どもがドイツを持ち出すな

 

vivanon_sentenceこのリンク先ではドイツとの比較もしています。大いに参考になります。

 

 

これらの課題をクリアするためには何が必要なのだろうか。

「犬税が導入されているドイツは、自己責任の意識が強い国です。たとえば、駅に改札がないので無賃乗車も可能なのですが、違反者には厳しい罰則が科されます。

犬税についても納税時に犬の首に鑑札が付けられるので、納税の有無が一目でわかるようになっています。

日本でも、犬の登録時にICチップなどを付けて数を漏れなく把握する、狂犬病予防注射とあわせて徴収して徴税コストを下げる、違反者には罰則を科す、などの施策によって導入が可能になるのではないでしょうか」

税理士ドットコム」より

 

 

このカッコ内は山本邦人税理士の発言です。

これを現にドイツはやっていて、だからこそ殺処分数をゼロに近づけられた。対して、日本では飼い主がこのような厳しい措置を受け入れない。

日本の飼い主はペットを飼うことに伴う責任感がないってことです。一部に無責任な飼い主がいるのでなく、大半がそうなのです。

 

 

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