松沢呉一のビバノン・ライフ

児童陵辱ポルノと断ずる根拠-『親なるもの 断崖』はポルノである 2 -(松沢呉一) -2,482文字-

この上ない悪書-『親なるもの 断崖』はポルノである 1」の続きです。

 

 

ありえない設定

 

vivanon_sentenceなぜ私は曽根富美子の漫画『親なるもの 断崖』を「児童陵辱ポルノ」だと断ずるのか。十一歳から十六歳までの少女四人が娼妓になることを前提に身売りされる設定になっているからです。

青森から室蘭の幕西遊廓にやってきた段階で、主人公の武子は十三歳になったばかりとあります。最年長の松恵は十六歳。その妹のお梅は十一歳。もう一人の道子も十一歳。このうちの三人が娼妓になります。

これはあり得ない設定です。漫画家のファンタジーでしかないのです。漫画家のエロ・ファンタジーを描くために、史実に基づいたかのような設定をしただけです。

十一歳、十三歳という少女が陵辱されるファンタジーを持つ著者が描いた漫画を同じ趣味の者たちが喜んで読んでいるというのが現実。

もちろん、この物語自体はフィクションです。だからと言ってあり得ない設定を実在の都市名や実在した遊廓名まで出して、さもあり得たかのように描くのは許されていいことではない。

「フィクションはどこまで嘘が可能か」というテーマはのちのちやる予定ですが、それが少女たちを陵辱する表現をするための虚構であるなら批判されるのは当然かと思います。

倒錯者が表現をしたっていい。倒錯者がそれを楽しんでもいい。しかし、ポルノはポルノとして販売し、ボルノとして楽しむことがこの社会のルールだったはずでは?

 

 

十八歳未満では娼妓になれなかった

 

vivanon_sentence冒頭の数ページだけでも、「高い税金に喘いで、金を回すことに苦労していた貸座敷(妓楼)が、一度に四人もの娼妓を抱え込むことはまず不可能」「娼妓になる段階で処女である率は極々少ない」「昭和に入ってからの幕西遊廓で、張見世(外から見えるところで鎮座する方式)はあり得ない」という疑問点が次々と出てくるわけですけど、こういう話は「『吉原炎上』間違い探し」でさんざん書いてきて、それらを繰り返していると終わらないし、この漫画が児童陵辱ポルノであることとは直接関係ないので、まずここでは年齢に絞ります。

この「『親なるもの 断崖』はポルノである」シリーズでは、誰もが確認できるように、国会図書館が公開している資料を極力使用することにします。

娼妓取締規則」を各自国会図書館で検索してみましょう。

以下は、三浦信編『改正現行法典』(明治四二年)より、「娼妓取締規則」の一部です。

 

 

 

 

読みづらいかと思いますが、第一条に「十八歳未満の者は娼妓たることを得ず」とありますね。十八歳にならないと娼妓にはなれなかったのです。

これは満年齢であり、数えで言えば十九歳から二十歳になります。植民地はまた別として、これは全国統一の法律であり、北海道でも当然適用されます。室蘭だけが別であったと主張するなら、その根拠になる資料をよろしく。

娼妓取締規則」の全条文が遵守されていたかと言えば、そうとは言えない部分がありますが、警察が営業許可を出す段階のチェックについては相当に厳しかったと言っていい。これは法の仕組みを考えれば当然かと思います。

 

 

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