松沢呉一のビバノン・ライフ

セックスにおける積極的合意-yes means yesの意義と実現性 2- (松沢呉一) -3,038文字-

酒を飲んでのセックスは厳禁-yes means yesの意義と実現性 1」の続きです。

 

 

合意の言葉を録音してからじゃないとセックスができない

 

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手に触れるのも、キスをするのも、乳を揉むのも、すべて事前合意が必要な時代になってきています。

以下は「虚構新聞」ではなく、「クーリエ・ジャポン」です。

 

 

 

1990年代初頭、米国のメディアは男性が女性からレイプの言いがかりをつけられることを避けるために、あらゆる段階で「言葉による同意」を得ることを勧めていた。なかでも、人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のコメディは核心をついたものだった。

「君のタンクトップを褒めていい?」「どうぞ」
「綺麗だね。唇にキスをしていい?」「OKよ」
「次は、お尻にタッチしてもいい?」「ええ、喜んで」

こうした質問はまた最近、米国人学生の間で支持を集めはじめている。

2014年のカリフォルニア州に続き、2015年にニューヨーク州、2016年にはコネチカット州など次々と「積極的合意」に関する法案が可決された。

多くの大学では、キャンパス内でのレイプや男女間のトラブルを避けるため、「積極的合意」をキーワードとした性交渉のルールが作られている。

たとえばニューヨーク州では、州内の大学に対し、キャンパス内で性交渉におよぶときには「積極的合意」を事前に得ることを義務付けた。規約には、こんな一文が書かれている。

「沈黙や我慢、静観は、“同意をしている”とは見なさない」

「クーリエ・ジャポン」より

 

 

積極的合意とは?

 

vivanon_sentence私もまだ充分には理解していないですが、「積極的合意の法案」というのは、大学内での性暴力事件、また、その冤罪事件の発生を防ぐため、性行為の前に、明確に合意したとの意思表示がなされなければならず、「体が抵抗してなかった」「イヤだとは言わなかった」「手を握り返してきた」といった「消極的合意」は合意にならないというルールのことです。

黙っていることで承諾したと見なされる「黙示の承諾」がセックスにおいては重要な進行役になってます。

公園のベンチで夕陽を見つめていたカップルがやがて体を寄せ合い、指をからめ始めます。男の手が女の肩に回る頃になると会話が止まり、5秒ほど見つめ合ったあと、唇を合わせます。舌を挿しこむと、相手も舌をからめてきます。以下略。

すべての過程で「黙示の承諾」が成立していて、言語的な確認と承諾が存在しません。平時はこれでいいわけですけど、あとになって、片方が「合意していなかった」と言い出し、片方が「同意していた」と主張する場合、第三者がそれを判断することは不可能に近い。

こういう場面は通常2人きりです。公園だったら他にも人はいましょうが、会話までは誰も聞いていません。聞いている人がいるとすればノゾキの人たちです。

ホテル内になると証人は誰もいない。まして酒を飲んでいたり、マリファナをキメていたりすると、記憶さえもいい加減になって、「言った・言わない」「やった・やらない」の水掛け論が続いてしまいます。

酒がからんでいることも多いでしょう。自制心がなくなりますから。

酒を飲まない私からすると、男であれ、女であれ、酔っ払っている状態の人間は全員頭がおかしいですから、どっちの言うことも信用できない。自分らでなんとか解決して欲しい。

※このような考え方は古くからあるようですが、ここ数年の動きは『yes means yes』という本の編者であるジャクリーン・フリードマンという人物の提唱によるもののようです。読みたい。

 

 

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