「積極的合意」は一般化しにくい-yes means yesの意義と実現性 8- (松沢呉一) -2,549文字-
「性風俗に学べ-yes means yesの意義と実現性 7」の続きです。
「積極的合意」のルールは厳しい
さまざまな条件で「積極的合意」がルール化した時に何が起きるのかのシミュレーションを頭の中でずっとやっているのですが、つくづくこのルールは大学のような限定的な場所でしか成立させられないと思います。同時に、大学では非常に効果的です。
「そうした方がいいですよ」という推奨のレベルに留まらず、このルールが強制力を持つ大学もあります。
「積極的合意」の記録を残しておけば、相手から「強姦された」と訴えられても対抗ができ、記録がなければ強姦が自動的に認定されるだけではなく、両者間でトラブルが生じていないのだとしても、記録を残さなかったことによって処分される大学もあるようです。
「積極的合意」の記録があるセックスのみが合法、それがないのはすべて違法であるという考え方です。言い過ぎだと思いますが、現実には合意があったとしても、合意の記録がないのはすべてレイプだという言い方がなされています。
この義務は両者を対象にしているので、どっちも処分されます。「私たちの間ではそんな手続きは必要がない」という合意がなされているカップルは存在し得ないのです。厳しいですね。「一回一回改めて合意に達するのではなく、年間まとめて合意書を作る」ということをやればいいのかとも思うのですが、これをやると、今度はその間に別れた場合にも、片方がセックスを要求することができてしまうので、たぶん無効でしょう。
合意がなされているのに記録を残していない場合、自分が処分されないようにするためには、「強姦された」と相手を訴えればいい。被害者になることで処分を免れる。実際にはそこまで厳しく運用するわけではないのでしょうけど、厳しくすると、虚偽の強姦告発を促してしまいそう。
厳しくしなければならない事情
なぜここまで厳しくするのか。実施率を高めないと、充分な効果が得られないためだと推測できます。
学内で行われるセックスの99%は今まで通り「積極的合意」の記録がないままだとします。「積極的合意」ルールを実践している1%の部分ではトラブルは起きにくいし、起きても解消が容易です。しかし、99%の部分には、「合意があったのに、記録がないだけ」という人たちが多数含まれています。ほとんどのトラブルは99%の人たちの間で起きますから、今まで通りの検証をするしかない。さもないと多数の冤罪を生みます。
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