いいセックス・悪いセックス-yes means yesの意義と実現性 9- (松沢呉一) -2,881文字-
「「積極的合意」は一般化しにくい-yes means yesの意義と実現性 8」の続きです。
公権力が下半身に踏み込むリスク
米国では、「積極的合意」の記録を残すルールをさらに各大学、各州に拡大すべしという主張がよく出ていますが、社会一般に広く拡大すべしという主張はあんまり見かけません。見逃しているだけかもしれませんが、そうなるのはまずいというところまで了解されているのだと思います。
「積極的合意」の記録を残すルールは大学という場所を対象とするものです。大学内のルールだけじゃなく、州法も大学を対象にしています。
その中でセックスをすることが了解されている空間に限定したルールにすることはできても、社会一般に広げるのは危険です。公権力が確実に下半身に介入してきます。
もしこれを社会一般のルールにするとしたら、やはり大学同様に実施率を上げないと効果があまりない。よって程度は違えど強制力を伴うものにするしかないでしょう。大変危険であります。
ここに鈍感で、このルールをただ拡大すればいいと考えるような人たちは、「積極的合意」というルールにそぐわない人たちとさえ言えそうなので、黙っていた方がいいと思います。
ハプニング的セックスは逮捕
どれだけ危険であるのかをわかりやすくするため、「積極的合意」の記録なきセックスは、両者ともに逮捕される犯罪行為という法律ができたと仮定します。
夏の男として知られる私ですから、夏になると毎日のように海に行くわけですよ。泳いでいたら、波に流され、遊泳禁止地区の海岸にたどり着きます。人は誰もいません。
ちょうどその時、同じように波に流されてきた美人さんがいます。
砂の上に寝ながら、休憩がてら彼女と話し込みます。
「今年の夏はまだセックスしていないんですよ」
「それは寂しいですね。今からしますか」
「いいですよ」
「だったら、積極的合意の記録を残さないと」
「録音できるものもペンもないですよ」
「じゃあ、砂の上にサインをしておきましょう」
ということでふたりでサインをしてハメていたら、そこに警官が現れます。
「はい、そこでストップ。君らは積極的合意をしているのか」
「もちろん。そこの砂の上に。あ、波に流されている」
「はい、逮捕」
逮捕に次ぐ逮捕
あるいは、私はいろんな人と親交を深めるのが好きですから、週末はハプバーに行くのが常です。
初めて会う娘さんと意気投合してセックスすることになります。胸の谷間を見せて大股開きをしていても合意しているわけではないですから、確認します。
「積極的合意の証拠を残さないと。でも、携帯もペンもロッカーに入れてしまった」
「じゃあ、これで体の上にサインをしておきましょう」
と彼女は口紅を出します。互いの体にそれでサインをします。
ということでハメていたら、そこに警官が踏み込んできます。
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