松沢呉一のビバノン・ライフ

酒とゲロの日々—下戸による酒飲み擁護 2- (松沢呉一) -3,350文字-

酒癖の悪い人たち—下戸による酒飲み擁護 1」の続きです。

 

 

 

フーリガン怖い、野毛怖い

 

vivanon_sentenceご報告です。前回書いた花見の際の言動を清義明は記憶していないそうです。脳の萎縮が始まっているのだと思われます。

しかし、「横浜の野毛では毎夜路上で泥酔しているのがいるけど、誰も救急車なんて呼ばない。甘えてんじゃねえ」となお言っていまして、花見の時に私が聞いたセリフは間違いなかったことが確認されました。フーリガンは怖いです。野毛も怖いです。

木野トシキについては、人に言われて思い出したことがあります。酔って他人の高いメガネを踏みつけて壊したことがあります。壊された側は、酔いから覚めても目が見えないので、相当に困ったらしい。彼の酒は「明るく、楽しく」ですけど、明るく楽しく迷惑です。

それでも男の酔っぱらいはまだいいのです。私はひどく酔っ払っている女子は怖いので敬遠します。フーリガンより怖い。野毛より怖い。

もちろん、女にとって酔った男は怖かったりしましょう。酔うと、見境なく迫るのがいますからね。あるいはやたらと髪の毛を触ったり、腰に手を回したり、知らない人の胸に触ろうとしたり。今私の頭の中には数名の名前が浮かんでます。

相手を選べばいいのに、「そこに行くか」みたいなところで迫るのもいます。上司の奥さんに迫ったのもいました。自制心ゼロ。うまくくどけたら、それもまた問題。

迫ってはいけない相手に迫って問題になっているのに、なお治らないのもいます。こういうタイプは必ず酔ってトラブルを起こすことを前提につきあいましょう。

 

 

男も女も酒乱には要注意

 

vivanon_sentenceこれは女も同じ。うだるように暑い夏の日に、タバコが切れたのでコンビニに行き、ついでにチョコモナカを買い、「金もおろしておくか」と銀行に立ち寄ったら、思いの外込んでいて、やっと金をおろして家に帰る頃には、ドロドロに溶けたアイスがモナカの下から垂れているが如くに酒に酔うと性欲が溢れ出すのがいます。比喩が長い。

ふだん抑制して自覚さえできていない欲望が爆発した状態の女とセックスなんてしようものなら、「松沢に無理矢理された。ケツの穴までなめれた」と吹聴されてしまいます。「ケツなめして」と言われたからしただけです。って、自分が書いた仮想に対して反論しなくてもいいですね。

男もそうですが、こういうタイプは酔っている時と酔っていない時の人格が違うのです。

したんだったらまだいいんですけど、なんもしてないのに、飲んでいる時に「体を触られて、ケツの穴までなめられた」と言い出すのまでいます。私は注意してますから、そんな体験はないですが、そういうデマを流されるのが時々います。

意識が混濁していて、願望が記憶として刻まれてしまったりするんでしょう。だったら、いい思い出として大事にしてくれればいいのに、酔いが覚めると、許せないことに思えてしまう。

キス魔もいますね。男だって、誰とでもキスしたいわけじゃねえよ。体をベタベタとくっつけてくるのがいると、私は席を移動します。

そうじゃなくても、ゲロ吐いたり、おしっこを漏らしたりするので、面倒くさくてしょうがない。

※図版は1970年代のエロ本から

 

 

奇跡の夜

 

vivanon_sentenceつい先日のことです。朝、ある娘さんとFacebookでメッセージのやりとりをしてました。面識はあるのですが、メッセージのやりとりをするのはこれが初めてだったと思います。

その日の深夜。知人のところからダンボール箱いっぱいのエロ本を引き取ってきて、それをキャリアで運び、途中で銭湯に寄って、家に向かっている時のこと。

向こうから夏らしいワンピースを着た若い娘さんが来ます。彼女はうつむき加減で歩いていたのでのですが、すれ違う時に、朝、メッセージのやりとりをした娘さんではないかとやっと気づきました。

しかし、はっきり彼女である確信はなくて、すれ違ってから名前を呼んだのですが、振り向きません。人違いだったかなと思って、後ろ姿を見ていたら、千鳥足です。右にフラフラ、左にフラフラ。相当酔っているようです。

それ以上、声をかけるのをやめ、見て見ぬふりをして、その場を離れました。「エロ本を大量に持った人に襲われそうになった」とか言われたら、前半は事実だけに弁明ができず、世界の大半は彼女を信じるでしょう。

 

 

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