松沢呉一のビバノン・ライフ

「アルコールハラスメント」は日本特有? —下戸による酒飲み擁護 7- (松沢呉一) -3,215文字-

酔っぱらいの救急車利用は有料に—下戸による酒飲み擁護 6」の続きです。

 

 

 

アルコールハラスメントは和製英語か?

 

vivanon_sentenceなにもかもをアルコールハラスメントだとしたがる人々は、これを「日本特有」「日本だけ」と言いたがる傾向があります。

それが本当かどうかを確認すべく、「alcohol harassment」を検索してみました。4000件しかひっかからず、しかも、日本語のブログ等で英語表記が出ていたり、日本を舞台にした記事に出てきている例が多いことに気づきます。

古いものでは、1991年12月27日付けの「オブザーバー」紙にこの言葉が登場しています。四半世紀前からある言葉なのですね。

しかし、その内容は日本が舞台であり、日本で使用されている言葉としてカッコつきでalcohol harassmentが出てきます。これって日本の造語ではなかろうか。

言葉が日本発ではないとしても、「アルハラ」なんてもんは、ほとんど日本特有の現象だとわかります。

この記事にもあるように、アルコール分解酵素がない人が多いために、「無理に飲んで倒れる」「死ぬ」という例が黄色人種では多い可能性は大いにあるにせよ、それで言えば中国や韓国も同じはず。それとは別の理由で、日本でのみ「アルハラ」が起きているらしいですよ。

 

 

たしかに日本特有らしい。しかし、その内実は…

 

vivanon_sentence中国や韓国でも酒を勧める習慣はあるのだから、日本特有に「酒を強制する傾向が強い」のか、「イヤだ」と言えない傾向が強いのか、どちらでしょうね。

もちろん、すべてだとは言いませんけど、私は後者のケースが圧倒的に多いのだと感じます。つまり、日本人だけが酒を勧めるのではなくて、どこにもあることなのに、日本だけがそれをハラスメントだとしたがるってことです。

この記事に出ている例は「仕事上断れない」というものですけど、詳細がわからないながら、すでに書いたように、これは就職の際に会社が、あるいは自分自身が考慮すべきことです。

それでもそこに限定していますから、この記事はいいとして、これを酒全体、宴会全体、バーベキュー全体に拡大している人たちこそが日本的な何かを体現しているのです。個が解決すべき問題を全体で解決させようとする傾向。

※台北にて。仕事が終われば酒を飲み、めでたいことがあれば酒を飲み、悲しいことがあれば酒を飲み、客人が来れば酒を勧め。どこでも同じ。

 

 

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