松沢呉一のビバノン・ライフ

酔っぱらいの救急車利用は有料に—下戸による酒飲み擁護 6- (松沢呉一) -2,835文字-

未成年が酒を飲んだ時の責任—下戸による酒飲み擁護 5」の続きです。

 

 

 

救急搬送一万人以上の内訳

 

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ハラスメントと言い得るのは一部だけ」で引用した記事もそうだったように、「アルハラ」だのと言いたがる人たちによると、酒で救急搬送されるのが年間一万人以上だそうですよ。税金の無駄遣いはやめろ。

しかし、ここも冷静に考えた方がいい。この数字は「酒の弊害」と言えるとしても、酒を強要された人たちの数字ではないのですから、これ自体、「アルハラ」にとっては意味がありません。現に私が参加しているような場がそうであるように、飲まない選択がある場においても、飲み過ぎて倒れる人たちはいくらでもいます。私もよく見てます。

私の周りではそう簡単に救急車を呼んだりはせず、呼ぼうとすると、清義明が激高しますけど、その程度でも呼ぶ人たちはいるでしょう。

内訳がどこにも見当たらないのですけど、救急車で搬送される中で、おそらくもっとも多いのは一気飲みを含めて「酒が好きで飲み過ぎた」って人たちかと思います。アルハラどうこうではなく、「飲み過ぎに注意しましょう」って呼びかければいい話。

それでも飲む人は飲めばいいとして、安易に救急車を呼ぶのはやめるべし。もちろん放置していいと言いたいのではありません。しかし、風邪をひいただけで救急車を呼ぶ人同様、ほっときゃいいものまで救急車を呼ぶのは感心しません。ここは清義明に賛成。

 

 

救急搬送される人は年間500万人以上

 

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救急搬送される人が年間1万人以上という数字を正しく評価するためには母数を知る必要があります。

総務省の発表によると、平成27年度の救急自動車による救急搬送者数は546万5,879人。すごい数。国民26人に1人くらいが救急車に乗っている計算になります。1人当たりで考えると、26年に1回ですから、まあそんなもんか。

つまり、酒による緊急搬送はその500分の1に過ぎません。消防庁によると、全国の救急車の数は6.000台強。1台につき、年間2回以下しか酒のために出動していないことになります。1人当たりに費やす時間は1時間もかからないのですから、1台当たり年間2時間も費やしていない。たいしたことないな。

では、飲む人の母数も考えてみましょう。1日数百万という単位の人が酒を飲みます。その365倍にした数のうちの1万件です。1年間に救急車で運ばれるのは、酒を飲む人数万人に1人といったところでしょう。全然たいしたことないな。

その母数ではいちいちすべてに税金を払っているのですから、酒飲みは充分にその分の負担をしていて、文句を言われる筋合いはないようにも思いますけど、税金は出した人たちだけで使うべきではなく、できるだけ有意義に使った方がいい。

新歓コンパや花見、忘年会のシーズンは、 必要な人のところに行くべき救急車が出払うことにもなるので、「無理して飲むな」「自分の容量を理解しておけ」といった呼びかけは当然あっていいと思います。アルハラとは関係なく。

 

 

酒飲みの救急車利用は有料に

 

vivanon_sentence以前から問題になっているように、安易に救急車を呼ぶことで車両的、人員的に限界に達していて、救急車の有料化の話も出てきてます。有料になると、本来呼ぶべき人が「金がなくて呼べない」ということにもなりかねないので、全面有料化はまずい。

500分の1の数字を少しくらい減らしたところで大勢に影響がないようにも思いますが、酒飲みは限度以上に飲むのを控え、やたらに救急車を呼ばないようにして欲しいものです。

また、酒飲みは自分で勝手に飲んでいるんですから、有料でいいのでは? 一般の病気や事故とは意味合いがちょっと違う。1回3万円くらいでいいんじゃないですかね。

そうすることによって、酒を断られなかった人たちが断るようになり、自制しなかった人が自制するようにもなることが期待できます。強要した場合は強要した人が払い、「断れなかった」という人を含めて強要とは言えない場合は自腹で。未成年の場合はその場にいた成人が払う。

 

 

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