フェミニストに異議を唱えるフェミニストたち—共感できるフェミニスト・共感できないフェミニスト 3-(松沢呉一) -2,983文字-
「性表現やセックスワークの規制と闘う女たち—共感できるフェミニスト・共感できないフェミニスト 2」の続きです。
属性でしか判断できない人たち
前回書いたように、自分の意見と合致しないと、「男だから」と納得しようとしてしまう方がいらっしゃるようです。属性でしか判断できない人たち。
それが自称フェミニストだったりするので、ビックリします。こういう人たちは、自分の考えと合致するものがフェミニズムだと錯覚しているのではなかろうか。「私」を肯定してくれるものがフェミニズムだと。
「おっぱい募金」批判をする自称フェミニストが、「自分の娘にはさせたくない」などと絵に描いたような典型的パターナリズムを展開する男の弁護士に共感していたのがいい例です。
これがこの国の「市井のフェミニスト」の惨状です。道徳観を共有しているために、糞フェミは糞パターナリズムに共振してしまうとしか思えない。仲良しさん。
内面化した道徳やセックスフォビア肯定してくれないフェミニズムの動きには興味がなく、歴史も学ぼうとしない。エロライターの私ほどにも、この国の婦人運動史や海外の動きに関心を抱くこともなく、パターナリズムさえもフェミニズムだと思えてしまうのだろうと推測します。まさにバカフェミ。
こういうタイプの人たちが属性で他者を判断する傾向については意味があると思っています。次回以降説明していきます。
※下のリストに出ているようにエリカ・ジョングも表現規制反対派
マック・ドウォーキン主義に反対する女たち
このことの間違いを『ポルノグラフィ防衛論』から確認しておきます。
マック−ドウォーキン派の人々は、フェミニストならば、皆彼らの考えに同調するものと思い込んでいるようだが、多くの女性フェミニストは、マック−ドウォーキン派の性的表現への執拗な批判に対して、反対の立場をとっており、検閲を要求する彼らの主張に対しても拒絶の態度を示している。(略)多くのフェミニストが、フェミニストとしての観点から性的な表現への検閲に反対しているのである。わたしたちは、検閲は女性の権利を向上させるものではなく、逆に女性の権利を侵害するものであると考えており、そのような考えに則してみると、フェミニストが主張する反ポルノグラフィ法案には二つの欠点があることがわかる。つまり反ポルノグラフィを謳う法律は、言論の自由と平等権の双方に害を及ぼすことになるのである。
(略)
検閲反対派フェミニストには、あらゆる分野の著名な活動家、芸術家、心理学者、学者、女流(および男性)作家などがいる。その中でも有名なのは、〝全米女性機構〈the National Organization for Women, NOW〉〟の創立者であり代表者でもあるベティ・フリーダン、 〝米国家族計画連盟〈Planned Parenthood 〉〟において長年にわたり代表を務めてきたフェイ・ワットルトン、またNOWの元代表者カレン・デクロウ、作家のアン・ベルネイ、ジュディ・ブルーム、 バーバラ・エレンライヒ、ノーラ・エフロン、ナンシー・フライデー、メアリー・ゴードン、スーザン・アイザックス、モリー・イヴァンズ、エリカ・ジョング、ジャマイカ・キンケイド、ケイト・ミレット、カタ・ポリット、アン・ライス、アドリエンヌ・リッチ、アリックス・ケイツ・シュルマン、ウェンディ・ ワッサーシュタインなどだ。
※内容が古くなっていて、ベティ・フリーダンは2006年死去。他にも亡くなっている人はいるかも。
マック・ドウォーキン主義とは?
「マック・ドウォーキン派」「マック・ドウォーキン主義」といった用語がこの本にはよく出てきますが、日本でも翻訳書が出ているキャサリン・マッキノンとアンドレア・ドウォーキンに追従するような人たちとその思想のことです。
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