松沢呉一のビバノン・ライフ

ムラ社会がネットリンチを生む—下戸による酒飲み擁護 15- (松沢呉一) -2,724文字-

安心社会から信頼社会へ—下戸による酒飲み擁護 14」の続きです。

 

 

 

道徳が規範になる社会

 

安心社会から信頼社会へ」で取りvivanon_sentence上げた山岸俊男著『安心社会から信頼社会へ—日本型システムの行方』(中公新書)に掲載されていた「安心社会の住民の方が、ムラの監視のないところではわがままな行動をとる」という実験結果は、ネットでの匿名の人格が傍若無人になることの裏付けとも言えます。

どこの国でも、ネットリンチと言われるような現象は起きているのでしょうけど、その内容や程度がおそらく違う。

どこの国でも、権力者を追及することはあるでしょう。企業を追及することもあるでしょう。

個人であっても、法に反する行為を追及することや、レイシズムのような社会正義に反することを追及することもあるでしょう。

しかし、「毛から世界を見る」シリーズの「日米ライブチャット比較」や「日本人は定価が好きでチップが苦手」に書いたように、とくに権力があるわけでもない人たちの道徳に反する行為までを晒して叩くようなことはやらない国が多いのではないか。

やるのがいたとしても大きな動きにならないのだと思います。フランスでは下半身スキャンダルをイエローペーパーが報じたところで、「へえ」で終わり

対して、社会正義ではない道徳という規範が力を持つのが日本の特徴だろうと思います。イエローペーパー・マーケットが大きいのです。「週刊文春」もそこに参入して部数維持を図ったように。ベッキーが不倫したって、どうでもいいだろ。週刊誌はそういうもんだと思いますけどね。

※普遍性のない私個人の感情としては、本当はどうでもよくなくて、スキャンダルにまみれると、その女性タレントを好きになります。これは昔っからで、それまでまったく興味がなかったのに、奥菜恵の写真が流出して奥菜恵が好きになりましたし、薬物で捕まって以来、酒井法子が好きです。クラブでイケイケの動画はいいっすよね。今は高樹沙耶が好きです。私がやっている行為で捕まったわけではなくても、虚像が崩れて、「なんだ、仲間だったのかよ」という印象になるためだろうと自分では思ってます。とりわけ高樹沙耶については、大麻ごときで、なんで騒いでいるんだよ。腹立つ。

 

 

制裁ムラから制裁国家へ

 

vivanon_sentenceこれまで監視と制裁は、ムラの中だけでなされていればよかったし、その外の人たちを制裁する方法もなかったわけですが、今はこれが国の隅々まで及んでいます。この時に、匿名で制裁ができるので、制裁は過剰になる。

100人で監視し合い、制裁し合うムラから、1千万人で監視し、制裁し合う国家へ。

そりゃたしかにコンビニのアルバイト店員が冷蔵庫の中に入ったり、ピザ屋のバイトがピザの生地で遊んだりするのは褒められたことではなく、食品衛生法に抵触することもありますから、そんなことをSNSに出すのはどうかしているわけですけど、それを全国から監視して、店舗を割り出し、バイトの身元も割り出して、バイトがクビになるまで追及するのは異常。

 

 

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