久保盛丸と電球オナニー伝説—明治時代にあったらしい事故例-[ビバノン循環湯 149] (松沢呉一) -3,060文字-
「赤線殺人事件」と同じく「スナイパー」の連載に出したもの。「名門女子高の生徒が学校で電球を使ったオナニーをしていて電球が破裂した」という都市伝説がありますが、明治時代に、それに類する事件があったかもしれないというお話。
電球オナニー伝説
「学校のトイレで女子生徒が電球を使ったオナニーをしていて、電球が割れ、血まみれになって運ばれ、死亡したのがいる」
全国各地にこんな話があって、いろんなヴァージョンがあるようですが、たいてい舞台は地元で有名な偏差値の高いお嬢様学校だったりします。
これについては拙著『エロ街道をゆく』(ちくま文庫)でも扱っています。学校のトイレでオナニーをするお嬢様女子高生が日本全国に一人としていないということはないでしょうが、学校でオナニーをするとしたって、ちょちょいのちょいとクリでオナニーするくらいのもんじゃないでしょうか。
なんぞ入れたくなったりしたところで、今時、学校のトイレに電球を使ってますかね。蛍光灯でしょう、普通。蛍光灯も割れやすいですけど、狭いトイレで突っ込むのは大変ですよ。上海雑伎団じゃないと無理です。
仮にトイレに電球を使っていたとしても、文具、歯ブラシ、ヘアブラシ、スプレー缶など、他にいろいろ突っ込むものがあるだろうに、わざわざ台かなんかに乗って電球を外して、暗闇の中でマンコに入れますかね。
点灯している電球はかなり熱いですから、割れる前に火傷します。
そもそも子どもを何人も産んだ経産婦ならともかくとして、電球は女子高生が入れるには大きすぎましょう。
オナニー常習者がローターを持ち歩いて、いろんな場所でオナニーしている例はありそうな気がしますけど、電球はないでしょ、電球は。
※いつも文庫の書影で飽きてきたので、単行本の書影です。
都市伝説に決定
ということから、ほぼ間違いなく都市伝説の類だろうと私は『エロ街道をゆく』で結論づけてます。なのに、これを読んだ男の中には、「いや、うちの地元では本当にそういうことがあった」と主張し続ける人がいて、この都市伝説は根強いものがあります。
2003年に発売された坂木俊公著『死体洗いのアルバイト 病院の怪しい噂と伝説』(イースト・プレス)は、現役の医者が、病院、医療、薬にまつわるさまざまな噂話を取り上げて検証したものです。ここでも、当然のごとくにこの話題を取り上げています。
著者が紹介している例では「授業中にオナニーをしていた」ということになってます。ましてやありそうにない。
著者はこの噂を「女性は自らの命をかけてもペニス支配に従属し続ける」という男側のメッセージが込められていると見ます。もっとわかりやすく言うと、「女は常々チンコを入れたくて入れたくてしょうがない」「女は無理矢理でもチンコを入れられると男に従属する」という願望ですね。
この辺の解釈はいろいろありそうですけど、それとともに、「女の性欲に対する制裁」「貞淑の強制」の意味合いが強く反映されていそうです。「女がそんなはしたないことをしているとこうなるのだ」との脅しです。だって、「男が授業中に鉛筆で尿道オナニーをしていて病院に運ばれた」という話もあってよさそうなのに、聞いたことがありませんよね。
著者は、このような実例があるのかどうか調べてみたところ、「医学論文を読みとばしたかぎりでは、そういうのは見あたりません」と書いてます。『エロ街道をゆく』で医大の先生に確認したように、膣、肛門、尿道への異物挿入による事故例は少なからずあるのですけど、学校で電球を入れて事故ったという例はないという意味です。
現実というのはそんなもんです。
久保盛丸の報告
ところが、ながーい歴史を振り返ると、そういう話も皆無というわけではないのかもしれません。
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