松沢呉一のビバノン・ライフ

アベック公園探訪-アベック健在、ノゾキも健在-[ビバノン循環湯 152] (松沢呉一) -4,639文字-

古い雑誌記事に出ていたアベック公園を巡って、今どうなっているのかを確かめつつ、ノゾキをやる趣旨の原稿。二〇〇七年、ミリオン出版の「パンディッツ」に書いたもの。これ自体はどってことない内容なのですが、上野公園の街娼のボスである千鶴さん(『闇の女たち』参照)が登場するので循環させてみました。もしかすると、千鶴さんに会ったのはこれが最後だったかもしれない。

取材時に撮った写真は見つけられないので、文中には出てこない公園で適当に撮ってきたものを使ってます。この撮影をした時も、イチャついているカップルは複数いましたが、もう寒いので、体を触ると冷たいと思われ、たぶんキスをしたり、服の上から触る程度かと思われます。

 

 

 

屋外プレイの何が楽しいのか

 

vivanon_sentence平凡出版(現マガジンハウス)が出していた「pocketパンチOh!」の一九七四年十月号を見ていたら、「ラブラブ公園テッテイ探訪記」という九ページの記事が出ていた。

アベック向けのガイドという体裁をとりつつ、東京と大阪の公園でノゾキをしていく内容である。大げさに書いている可能性もあるのだが、公園の多くは青姦場と化しているというのが探訪の結果。

今から三三年前、私が高校に入った年だ。この時代、公園はデートスポットの筆頭であり、エロスポットの筆頭でもあった。公園でのデートやカーセックスがレジャーなら、ノゾキもまたレジャーであり、こういう記事は当時しばしば見かけたものだ。

そんな記事を見て育ったためか、私も公園でいちゃついたことは幾度となくあって、公衆便所、車、観覧車、ビルの屋上、非常階段、オフィス、路上などなどで、セックスをしたり、フェラをしてもらったり、マンコをいじったりしてきた。昔から私は他人のことがどうでもいいので、人がヤっているところを見てもそんなに楽しくなく、ノゾキはほぼしたことがないが。

そんな話を本誌の担当編集者にしたら、彼は本来ヤッてはいけない場所でセックスしたことがまったくないという。

「だってコンドームはどうするんですか」

「必ずしも入れるわけではないし、入れたとしても、軽く挨拶程度だから、たいてい生だろ。事故みたいなもんだ。オレが若かった頃はまだエイズがほとんど問題にはなっていなかったし」

挨拶が終わると、そのあと、うちなりホテルなり、安心できるところでたっぷりする。つまり屋外での行為は前戯、前座なのである。手遅れかもしれないが、ここからコンドームをつける。

※該当号は見つからないので、別の号です。

 

 

今も公園でハメているカップルはいるのか?

 

vivanon_sentence「だったら、最初からそういうところですればいい」と彼は言う。風情とか興趣とかが理解できない、味気ないヤツだ。

「前戯なんてなくていい。キスもクンニもフェラも省略して、即入れればいいではないか」と言われた気分である。前戯はそれ自体もまた楽しいし、外ですることによって、興奮を高める。そうすっと、そのあとベッドでやる時の快楽が二割くらい底上げされる(当社比)。

それとともに、そういう場所でやることで、クリアした感覚もある。何をクリアしたのかわかりにくいが、観覧車でセックスをすると、「観覧車でセックスをする」というポイントをゲットする。そうやってひとつひとつポイントをゲットしていって、スタンプカードがいっぱいになると、もう一回余分にセックスができることになっている。

この説明でもわかりにくいかもしれないので、別の説明をすると、面白いかもしれないことをやらないでおくのは悔しいってことだ。実際、そんなに面白くないのだとしても、やったことに達成感と満足感がある。そのため、一回やっておけばいいってもんだったりする。しかし、やらないでおくと、面白いかどうか一生わからずに死んでいくことになるのだ。

屋外プレイとは関係がないが、たとえば回転ベットは実際に体験してみると、たいして面白くはない。その面白くなさを味わいながら、「これって何が楽しいんだっけ?」「セックスが楽しいんじゃないか」「だったら、回転しなくても同じだよね」「そう言われてみると、そうだな」と語り合って、体験した実感を得るのが楽しいのである。

義務感めいた感覚とも言えて、これは昔の雑誌が「屋外プレイ」の記事をよく作っていたがために生じたものかもしれない。雑誌に紹介されていたラーメン屋にとりあえず行ってみる感覚だ。うまくてもまずくても行って食べさえすればいい。

事実、他の編集者に聞いても、男女ともに屋外でしたことは一度もないというのがけっこういたことに驚いた。そういった記事が出なくなった今の時代には、公園でやることの意義がなくなって、義務もなくなって、快楽もなくなっているのではないか。

もちろん、いつの時代も露出カップルはいるわけだが、そういった男女にとっては、ハプニングパーやスワッピングパーティなど、より安心して露出できる場所が出てきたので、何も公園でやらなくてもいい。そういう場でも捕まることがあるので、そんなに安心でもないのだが。

マニアじゃない人たちが、軽くエロいことをやってしまう場としては、カラオケ・ボックスもある。つまり、公園でいちゃつくカップルは消滅しつつあるのだ。

ということにして、なんとか仕事につなげようとの魂胆である。

 

 

井の頭公園は時間が早すぎた

 

vivanon_sentenceでは、公園でいちゃつくカップルを確認してみるとしよう。

女性編集者Aさんを同行して、まずは井の頭公園へ。「pocketパンチOh!」の「ラブラブ公園テッテイ探訪記」でもそうしているのだが、ノゾキはカップルでやった方が疑われない。

なぜ最初に井の頭公園を選んだかと言えば、学生時代に吉祥寺周辺に住んでいた私もここではいろんなことをしているからだ。井の頭公園の隅々まで私の精液が染みこんでいると言っても過言ではない(いくらなんでも過言)。

早い時間は井の頭自然園が狙い目である。ここは有料なので、昼間でも人が少ない。いたとしても子ども連れのお母さんたちなので、行動範囲は知れていて、死角が多数ある。当然私は二十代にして、ここはクリアしている。

ところが、この日は休園日であった。残念。

そこで私がかつてハメたことのある公衆トイレを探した。思い出の場所は建て替えられていたが、「おそらくここ」というトイレを発見。懐かしくて涙が出てきた。チンコの先から。

ラブラブ公園テッテイ探訪記」には「御殿山がオススメ」とある。上は広場だが、その周辺に木が生えているので、木陰でハメることができそう。しかし、この時はまだ明るかったので、井の頭公園は早々に切り上げて、千鳥ヶ淵公園に移動した。

 

 

千鳥ヶ淵公園のブランコでハメていたカップルがいた

 

vivanon_sentence千鳥ヶ淵公園は。皇居のお堀を眺めるように続く遊歩道みたいな公園だ。

ラブラブ公園テッテイ探訪記」によると、この公園のブランコでハメているカップルがいたという。以前職場が近かったので、私も昼休みによく行っていた公園だが、あんなところで、デートするかぁ?  どうも解せない。

ところが、現場に着いて驚いた。まだ七時台である。しかも、ジョギングしている人たちが多数いて、巡回している警官も多数いるのに、ブッチュブッチュやっているではないか。皇居側には監視カメラが多数あって、あちらからもブッチュブッチュやっている様が見えるはずだ。不敬罪で逮捕されるぞ。

日本人のみならず、妻子のいるインド大使館員と大使館で働く日本人カップルも大胆に舌をからめあっていた(この二人の関係は編集者と私の推測。インテリ風インド人らしき男と真面目そうなOL風日本人だったのだ)。

 

 

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