松沢呉一のビバノン・ライフ

ポルノ・リテラシーの必要性—マリアンヌ・メイシー著『彼女のお仕事』を推薦する 3-[ビバノン循環湯 171] (松沢呉一) -4,729文字-

自分の性を他者に押しつけないではいられない人々—マリアンヌ・メイシー著『彼女のお仕事』を推薦する 2」の続きです。

 

 

 

原因はどこにあるのか

 

vivanon_sentence前回書いたように、性表現を禁圧したがる勢力は根拠なく安易な解決を求め過ぎ。あるいは犯罪を利用して、「性の神話」に反するものを駆逐しようとしているだけであって、解決にならないどころか、自分らの表現をも潰していきます。

結局のところ、性犯罪者とポルノの関係は何ら立証されておらず、仮にポルノがひとつの契機になっているのだとしても、あくまで契機、つまりリリーサーの役割を果たしたに過ぎず、ポルノを見て我慢できずに強姦してしまったと本人が証言したとしても、そいつは道を歩く女のスカートから出ている足を見ただけで、「犯されたがっていると思った」なんて言って強姦しようとするような人間かもしれないわけです。

このような可能性を考えていくと、「強姦された女も悪い」という発想が出てきてしまい、女の服装や行動も規制の対象となり、性について積極に考えることまでが必然的に抑圧される方向に進みます。なにしろ人は、何が原因で個人の性を作るのかも十分に解明されておらず、何が性犯罪者とそうでない人とを分けるのかもわからないのですから、リリーサーになり得るものを片っ端から消していくしかなくなるのです。

前出のNCAC事務局のベティ・フリーダンはこう言ってます。

 

 

現代の女性解放運動のさきがけになったわたしの著書『新しい女性の創造』は、猥褻文書として発禁になりました。

 

 

新しい女性の創造 このように、アンチポルノ派の主張を徹底していくと、性にまつわるすべてを隠蔽していくことになります。フェミニストの主張は、女に強いられてきた性の抑圧を解放していくことがしばしば含まれるわけですけど、これさえも発禁になることを要請していくのです。

この社会では、女に対する強い抑圧を肯定する傾向が根強いのですから、それを背景にして、女性の表現、女性に向けた表現こそが強く規制されかねず、日本にもおいても、たかがananが、男性ヌードによって有害図書指定を受けたようなバカバカしいことがどんどん起きることでしょう。

アンチポルノの主張は女たち自身を縛っていくことになるのが必然。規制派が信ずる「神話」では、女がセックスを求め、ポルノを楽しむようなことはあってはならないのですから、性犯罪を減らす効力がないまま、女の性をとことん不自由にするだけに終わりかねません。宗教右派と直接手を組まずとも、彼らの道徳、あるいは家父長制道徳を強化するのがポルノ規制派です。なんのことはない、その根源にある道徳はすべて同じってことです。フェミニズムとはなんの関係もない。

だからこそ、マリアンヌ・メイシーも、この本に出てくる多数の女たちもポルノ禁圧に反対をしているのです。そこんところをちゃんと見据えるべし。

※うちにある『彼女のお仕事』はどこにあるのかわからないので、手元にある人は確認して欲しいのですが、ベティ・フリーダンの著書が発禁にされたのは、たしかカナダだったと思います。カナダは悪い方向でのポルノ規制の先進国であり、女たちの性の表現もまたポルノになることをよく見せてくれています。

 

 

ポルノに対するリテラシーを

 

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たしかにポルノは、「欲望を肯定するもの」になり得ます。つまり、抑圧された性を引き出し、認めさせる効果です。

 

 

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